宿泊業界における具体的な情報開示があれば利用しやすくなる

2018.06.10 (日)

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バリアフリースタイル代表の白倉です。宿泊業界などのバリアフリー化は残念ながら遅れていると言わざるを得ない点が多いでしょう。車椅子などを利用している側からすると、宿泊施設のホームページを閲覧しても、バリアフリーかどうかが分からないことが続いています。さらにFAQ(よくある質問)にもバリアフリーについても記載されていないことが多いものです。そこで利用者側にとっても、企業側にとってもプラスになる方法はないかを考えてみたいと思います。

売り手と買い手の気持ちが一致しないことが課題

よく見かける宿泊施設のホームページには、バリアフリーの内容において「館内には貸出用車椅子があります」、「ロビーには多目的トイレがあります」くらいしか書かれていません。つまり宿泊したい人がホテルを利用するにも関わらず、取捨選択をするための情報が全く書かれていない点が挙げられます。だからといって、電話で宿泊施設に確認すると「バリアフリールームは1室あります」と回答されるため、利用者からは「なぜホームページ上に情報開示しないのか?」という疑問を感じます。

 

逆に宿泊業界側の意見によると、とにかくクレームが嫌だから開示しないという声をよく聞きます。そういった声が多い理由としては、利用者側が想像していたバリアフリールームの部屋ではないことによって、クレームになってしまうケースがあるようです。

 

利用者側からすると、バリアフリールームという情報だけで何でも利用可能と想像してしまいがちです。単に車椅子での利用ではなく、ストレッチャーでの移動や酸素ボンベをつけての移動などでも対応してくれるという期待をしてしまうことから、実際に行ってみたら対応できないのでどうしようとなってしまうことです。また障害の部位やレベルに応じて、利用の仕方も変わってくることもあり、バリアフリーという一言では対応できない点もあるでしょう。

車椅子生活での初の宿泊で「我慢してください」と言われた

そもそも私が現在の仕事であるバリアフリーに関わったのは、2000年頃に車椅子生活になって初めて出かけた宿泊旅行の出来事にさかのぼります。バリアフリールームを利用したものの単に広いだけの部屋で、風呂とトイレの入口にには10㎝以上の段差があって、ドアは車椅子の幅より狭い引き戸になっていました。明らかに車椅子利用者が使える部屋ではありませんでした。

 

もちろんトイレ・風呂は使えなかったので、フロントに問い合わせたところ、「我慢してください」と言われたことがありました。結局は、今まで述べてきたことによる大きな課題は、利用者が考えていることと企業側の考えていることが一致しないことにあります。そこが解決しないからトラブルになるのであり、トラブルを避けるために情報を開示しなければ利用者が来ないというあまりにもネガティブな思考になっています。

 

そこで大事なポイントは、具体的な情報を開示することと完璧なものを目指さないことではないでしょうか?つまりはお互いに考えていることが一致できれば、トラブルは少なくなるにちがいありません。障害者・高齢者などは様々な病気・ケガになっており、車椅子に座っていても症状は千差万別です。だから完全な対応をすることは間違いなくできません。

 

例えば、Aさんは利用できても、Bさん・Cさんは利用できないことはあって当然です。でも情報を開示することでAさん自身が、ホームページや電話での問い合わせで自分の身体であったら使えると判断できるようになることが利用者の拡大につながります。情報の見える化をすることで、当事者が利用可能かどうかの判断をできるようにすれば、クレーム自体が減るでしょう。目的地に行かなくても、分かることがカギを握ります。

情報の見える化こそが当事者に判断材料を伝える

そのため情報は「画像」「間取り」「貸出用具」をきちんと明確化することと、できれば「動画」を通して利用できるイメージを掴んでもらえるように工夫することで、大きな判断材料となります。また電話で問い合わせがあったときにも単にバリアフリーか否かではなく、具体的な要望をお聞きした上で、回答するような工夫が必要になるでしょう。

 

もちろん10人の車椅子利用者がいれば、10人を受け入れる体制にしたいと思うものですが、企業の改修費用などを考えればほぼ不可能でしょう。大事なことは身の丈にあった形の中で、自社では何ができるか?どういったお客さまをターゲットにしていくかを考えた上で、10人中0人だった受け入れが3人・5人ならば対応可能だと考えていくことではないでしょうか?それだけでも大きな成果につながり、人に優しい企業になるにちがいありません。

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