シダックスこそが先駆けだったエンタメ ~カラオケ撤退でも残してほしいバリアフリー~

2018.06.24 (日)

病気や不慮の事故によって車いす生活になっても、健常者のときと同じような日常生活を楽しみたいと思う気持ちは誰もが抱いているが、現実は諦めなければならないことが多くなりがちだ。交通インフラや大型商業施設などはかなり整備されてきたものの、路面店に至っては、段差・トイレ・駐車場・通路幅など設備におけるバリアが解消されていないために断念することが多くなる。

 

「昔、よく通ったレストランがあったが、車いす生活になったのでもう行けない」、「両親がよく連れて行ってくれた思い出のレストランに、今度は両親を連れていきたいと思っても、両親が車いす生活になってしまって難しい」といった声をよく聞く。

 

もちろん企業においてもバリアフリー化にはコストの課題がある以上、簡単にはバリアフリー化を目指すことができないかもしれないが、世の中に「バリアフリー」という言葉があまり定着していなかった15年位前に、エンターテイメント業界におけるバリアフリーの先駆けとなったのは、シダックスだった。

 

今回シダックスが、カラオケ事業から撤退すると聞いて驚きを隠せない。カラオケファンでもあまり知られていないが、車いす利用者にとっては、バリアフリー対応のカラオケ店と言えば「シダックス」という声が多い。店頭の看板には、国際シンボルマークである車椅子のマークが掲げられているので、「ここなら大丈夫」と一目で分かるようになっている。

 

バリアフリー導入率は、全国180店舗中178店舗(98.9%)なっており、2店舗を除くとほぼバリアフリー化に至っている。また駐車場の設置率も78.9%と高い。しかもバリアフリーの情報はホームページ上に掲載されているため、どこの店舗がバリアフリーなのか一目で分かる。つまりシダックスに行けば、多機能トイレ・障害者用駐車スペース・車いすでも入れるカラオケルームなど車いす利用者が安心してカラオケが楽しめる環境になっている。

 

※シダックスHP調べ 2018年6月9日現在

車いすで安心して行けるのはシダックス

私は22年前に交通事故により車いす生活になったが、当時はカラオケに行くこと自体、難しい時代だった。車いす生活になる前は、よくカラオケに行ったものだが、その後は店舗がバリアフリーではない理由で諦めていた。20年前のカラオケ店は、駐車場やトイレの点だけでなく、段差や入口のドアが狭いことで、車いす利用者が入れるような状況ではなかった。

 

会社の送別会や忘年会でカラオケ店に行くことになっても、車いす利用者の私だけは参加することができなかった。しばらくすると住んでいる街にバリアフリー化されたシダックスがオープンすると、会社の同僚は、私が参加するなら「シダックスにしよう」と言ってくれて、たった1人の車いす利用者のために数多くあるカラオケ店の中でもバリアフリーの整ったシダックスだけを選ぶようになった。

 

そこで気になるのが、競合他社におけるカラオケ店のバリアフリー化についてはどうなっているかと言うと、大手カラオケチェーン店のホームページを調べてみた結果、バリアフリーの情報を掲載しているのは、残念ながらシダックス以外には見当たらなかった。

 

もちろんホームページ上で掲載されていなくても、もしかしたらバリアフリー化が整備されているかもしれないが、利用者側からすると、情報の見える化になっていないため安心できない。そのため利用できるかどうか判断が難しくなるが、電話でいちいち確認をするのは、意外と面倒な作業である。しかも電話で問い合わせてみて、「うちはバリアフリーではない」と何軒も立て続けに断られてしまうと、「もう無理だ」と次第に諦めてしまいがちになる。

 

最悪なのは、電話で問い合わせた際、担当者が「大丈夫だと思いますよ」と回答したものの、現地に行ってみたらバリアだらけだったといったケースもある。しかし実際には、多機能トイレ・障害者用駐車スペース・車いすでも入れるカラオケルームなど、車いす利用者が安心してカラオケが楽しめる環境のカラオケ店は未だに少ないことは確かだ。

選択肢が増えればもっとエンターテイメントを利用しやすくなる

他のエンターテイメント業界についてはどうなっているかと言うと、車いす利用者にとって利用できるエンターテイメントは増えているものの、選択肢の自由が少ない。例えば、映画館は大型ショッピングモールの中に入っているのでバリアフリー化にはなったものの、車いす利用者が鑑賞するスペースは決められている。

 

建物の構造上やむを得ないのかもしれないが、そのスペースはスクリーンの最前列に設置してあることが多い。コンサートであれば、前列にいくほどうれしいかもしれないが、映画となると一番前で観ることは、首が疲れてしまい、あまりうれしいことではない。

 

野球観戦については、アメリカでは内野席・外野席など選択肢があり、ある程度自由に観戦できる環境があるものの、日本においては1・2ヶ所に場所が定められていて、車いす利用者が自由に観戦場所を選べる環境ではない。それでも少しずつ工夫はされている点は評価したい。

 

例えば、東京ドームには以前3塁側内野席にしか車いす専用スペースはなかった。ジャイアンツファンであれば、ホームの1塁側で応援したいものであるが、3塁側にいると応援の激しい阪神ファンに囲まれて、ジャイアンツを応援するのが怖かった記憶がある。今では3塁側内野席だけでなく、1塁側内野席にも車いす専用スペースができて、多機能トイレにおいても両サイドに設置された。

 

その他の課題といえば、同伴者は隣で観ることができず、車いす利用者の後ろで観なければならない。せっかく一緒に観戦するのであれば、横並びで顔を合わせて観戦したいものである。その他のエンターテイメントについては、例えばライブハウスは、防音のために地下に設置することが多いために、車いす利用者が気軽に行きにくい環境でもある。

バリアフリーにおいては情報の見える化が欠かせない

シダックスの話に戻るが、以前は約270店あった店舗が、現在では180店となり、約3分の1の90店舗は店舗閉鎖になってしまった。それに伴いバリアフリーの店舗も一気に減ってしまった。しかも今回の事業撤退によって、カラオケ館に引き継がれるとしても、今後はどうなるのか分からない。

 

ただ今回引き継がれると言われているカラオケ館の新橋本店に行ったところ、車いすで利用でき、多機能トイレも設置されていた。カラオケ館は、シダックスの設置率ほどは高くはないが、バリアフリーに関心のある企業であることもホームページから分かる。(できれば「キャンペーン欄」ではなくもっと分かりやすいところにあるとありがたい)シダックスは車いす利用者にとって評判のいいお店だっただけに、バリアフリーの面においてもぜひ継承されることで、利用者の促進につながるにちがいない。

 

エンターテイメント業界全体においても、2020年東京五輪・パラリンピックの開催や超高齢化社会が進んでいく時代に、より一層バリアフリー化が進んでいくことを願っている。そのためには、バリアフリーの設備が整っているかどうかが実際に行ってみないと分からないのでは、車いす利用者に安心して楽しめるスポットとして認知されにくいため、積極的な情報の見える化に力を入れてくれると利用者が使いやすくなる。

 

さらに設備だけではなく、従業員の対応による心のバリアフリーができれば、ちょっとしたバリアにおいてもマンパワーで解決できるようにもなるだろう。企業のバリアフリー化にはコスト面の課題もあるが、売上や集客につながる手段としてバリアフリー化をきちんと展開できれば、現在の高齢者約3500万人がやがて更なる高齢化が進んだときに、増え続ける可能性のある車いす利用者から選ばれていくだろう。客数増加により収益拡大だけでなく、人に優しい企業として価値を生むにちがいない。

★シダックスホームページ→こちら

 

★カラオケ館ホームページ(キャンペーン欄)→こちら

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