車椅子生活20年の気づきから伝える、バリアフリーが“選ばれる理由”
バリアフリーアドバイザーの白倉栄一です。
車椅子での生活を始めてから25年以上が経ちました。
この10年間で、街の風景は大きく変わりました。
今では電車や商業施設などでも、車椅子利用者を日常的に見かけるようになりました。
そして今後、こうした流れは超高齢化社会の進展により、さらに加速していくと考えられます。
このような時代の変化に合わせて、私たちが考えるべきこと——
「小売店・飲食店などの商業施設は、どのように変わっていけるのか?」
今、求められるのは「誰もが安心して訪れられる場づくり」です。
バリアを解消することは、もはや「コスト」ではなく、「価値ある投資」なのです。
「バリアフリーには価値がある」という視点を持つことが、これからの店舗経営において他店との差別化につながります。
1. 高齢化社会が進み、車椅子利用者が増えている
日本では高齢者人口が3,500万人を超える中、病気やけがの影響で車椅子を利用される方も増えています。
また、身体障害者は全国で約400万人。
そのうち半数以上が肢体不自由者であり、多くの方が車椅子を使って日常生活を送っています。
以前は付き添いが必要だった車椅子利用者も、現在では単独で行動される方が増加しています。
駅や商業施設、スーパーなど、あらゆる場面でその姿を見るようになりました。
例えば、かつてはいつも空いていた身障者用駐車スペースも、現在では満車のことが多くなっています。
これは社会全体で車椅子利用者が増加している、何よりの証です。
この現状を踏まえると、従来型のバリアフリー対応では対応しきれない時代になっています。
今こそ、より実践的かつ多角的なバリアフリーへの取り組みが求められています。
2. 障害者と接点のなかった教育環境が影響している
障害のある方々と関わる機会がなかった世代にとって、障害者への接し方は分かりづらいものかもしれません。
最近では、障害のある児童が地域の小中学校に通う例も増え、自然な交流が育まれるようになってきました。
このような経験があると、「障害者だから○○」という偏見がなくなり、日常的に手を差し伸べることが自然な行動になります。
一方で、学校教育で障害者と過ごした経験がない方は、テレビなどの偏った情報だけを頼りにしがちです。
「障害者はかわいそうだから助けるべき」といった一方的なイメージが生まれるのも、そのためです。
本当に必要なのは、同じ立場で関われる共生の視点です。
そのためにも、商業施設や企業において、今こそ実体験に基づいた「正しい理解」が求められています。
3. 身近に障害者がいることで変わる視点
障害者に関心を持つきっかけは、意外にも「身近な誰かの存在」から生まれます。
私自身、1996年に交通事故で車椅子生活になりましたが、それまでは障害者に対する意識はほとんどありませんでした。
職場にあった多目的トイレの存在さえも、障害者になって初めて気づいたほどです。
例えば、同じ職場に車椅子ユーザーの同僚がいるとしたら——。
歓送迎会を企画する幹事が、会場選びで「段差は?」「トイレは?」「駐車場は?」などの視点を持てるようになります。
こうした問いが出てくるだけでも、大きな進歩です。
答えは机上では出せません。
当事者に直接聞き、一緒に現場を見ることが、最も確かなアプローチです。
このように相手の視点を知ることで、「かわいそう」という視線ではなく、対等な仲間として接する意識が芽生えてきます。
4. 見方が変わると、勝手なイメージがなくなる
視点を変えると、障害者に対する誤ったイメージが自然と解けていきます。
「障害者だからできない」ではなく、「どうすればできるように工夫できるか」と考えるようになるからです。これは店舗運営にも大きなヒントを与えてくれます。
段差、トイレ、通路幅、テーブルの高さ、接客方法——
少しの改善で、「選ばれるお店」になる可能性があるのです。
また、職場での配慮や工夫は、チームワークや職場環境の改善にもつながります。
お互いをフォローし合える文化が根づけば、自然と働きやすい職場が生まれます。
その結果、離職率の低下や従業員満足度の向上といった成果にもつながるでしょう。
バリアフリーは、すべての人の「働きやすさ」や「買いやすさ」に直結する、未来のスタンダードです。
★もしバリアフリーについてご興味があれば、YouTube「バリアフリースタイルTV」でも配信しています。ぜひご覧ください。