「バリア解消」がもたらす日常生活・ビジネス・雇用のポイント

私は車椅子生活を20年以上経ちましたが、この10年の状況は、公共交通機関に乗っても車椅子利用者が当たり前のように見かける状況になっています。しかも今後において、さらにその流れは、超高齢化社会に伴い、ますます加速していくでしょう。そこで時代の流れにのって、「小売店・飲食店など商業施設はどのように変わっていけるのか?」

 

重要なポイントになるのが、いかにバリアを解消することができて、車椅子を利用しているお客さまにもお越しいただけるようにするかです。決してバリア解消は、「コストがかかる」というネガティブなワードではなく、「売上・集客に左右する」というポジティブなワードになる時代です。まさにバリアフリーには価値がある」と言えるでしょう。だからこそ、誰もあまり対応していない今だからチャンスであり、他店との差をつける絶好の機会になります。

 

1.高齢化社会が進み、以前よりも車椅子利用者が増えている

高齢化社会による高齢者は、3500万人を超える状態になってきました。もちろん多くの方々は元気な方々です。しかし一部の方々は、病気やけがによって車椅子の生活をしている方々がいます。

 

身体障害者においては、約400万人と言われております。その中の約54%が肢体不自由者です。その中に車椅子を利用しなければ生活できない方々がいます。そういった意味では、日本全体でも多くの方が車椅子の生活をしていることになります。

 

常時、車椅子を使用しない方もいらっしゃいますが、車椅子を利用されている方は以前に比べて徐々に増えつつあります。電車の中でも、スーパーの中でもいろいろな場面で車椅子を利用している人を見かけることが多くなりました。

 

以前は、車椅子利用者が単独で行動する人が少なく、付き添いの方と一緒に行動することが多かったように思えます。しかし最近では、車椅子利用者が単独で行動している姿をよく見かけます。

 

そういった背景をもとに、従来ではなかなかありえなかったことが発生しております。例えば、身障者用駐車スペースは、10年前は毎回空いている状態であったことに対して、最近は満車であることが目立っています。明らかに車椅子を利用する人が増えてきたといえるでしょう。

 

こういった状況を考えると、従来のバリアフリー対応では難しいのかもしれません。それだけ高齢化社会が以前にも増して、加速している証拠ではないでしょうか?今後バリアフリー化の導入を考えていらっしゃる人は、そういった部分を踏まえていく必要があります。

 

 

2.学校教育で障害者との接点がなかったことが影響している

障害者を取り巻く環境は、乙武洋匡さんの「五体不満足」がベストセラーになって大きく変わりました。1人の障害者が有名になることで、世の中が随分変わってきました。

 

そして最近では、障害があっても一般の小中学校に通う生徒が増えてきていると言われています。まさに乙武さん効果です。学校で障害者とともに過ごす生活に慣れることで、「障害者だから○○」といった変なイメージをもつことが無くなっていきます。

 

普通に会話したり、一緒に通学したりすることが日常的になります。そしてもし何か困っていることがあれば、気軽にフォローしてあげることができるようになるでしょう。

 

そこには、決して上から目線で「障害者だからかわいそう」「障害者だから大変だ」といった気持ちはありません。仲のいいクラスメイトであり、仲のいい相談相手だったりします。そういった形があるべき姿です。

 

でもそういった経験を持っていない大勢の方々は、学校教育の中で障害者と一緒に過ごした機会がありません。そのために今まで障害者と話したこと経験がないという声をよく耳にします。

 

そのために「障害者だから○○」といった勝手なイメージを想像してしまいます。そしてバイアス(偏見・偏り)がかかってしまうのです。残念ながらテレビ番組などの偏った見方の影響で「障害者はかわいそうだから助けてあげよう」というような上から目線的な報道がなされてきました。

 

それは障害者にとって、喜ばしいものではありません。障害があっても健常者と同等の立場で、お互いが付き合える関係を願っています。その部分において、健常者と障害者の共生社会に大きな壁があるといえます。

 

そのバイアスを壊さない限り、小売店・飲食店などの商業施設においては、車椅子利用のお客さまに喜んでいただける接客・応対ができないままにいます。だから今、きちんと車椅子利用のお客さまのニーズをつかんだノウハウを学んでいく必要があります。

 

 

3.家族・友人・同僚などに障害者がいると分かる現実

今後は東京オリンピック・パラリンピックの開催や高齢化社会の時代です。また小中学校において、こころのバリアフリーが義務化されます。まさにバリアフリーというキーワードは現代社会に欠かせないものです。

 

私は1996年9月交通事故に遭い、一生車椅子生活になると宣告を受けました。恥ずかしいことに障害者になる以前は、全く障害者のことに関心がありませんでした。自分の働いている職場(農産売場)の近くに、多目的トイレがあったことを障害者になって初めて気づいたくらいです。

 

実際にご家族・友人・同僚の中に車椅子を利用している方がいて初めて、世の中における不便さなどに気づくでしょう。むしろそうでなければ、分からないのも無理はありません。

 

例えば、こういうことが起こっていきます。社内で一緒に働いている車椅子ユーザーの同僚がいるとします。社内の歓送迎会があったとします。その時に幹事となったあなたならどうしますか?

 

車椅子ユーザーの方をはじめから歓送迎会に参加させない形をとったならば、いつまでたっても職場の仲間入りはできないでしょう。しかも車椅子ユーザーの方を同僚とみていない証拠です。早急にチームワークの再構築をすべきでしょう。

 

大概は車椅子ユーザーでも利用できるバリアフリーの設備が整ったレストランや居酒屋を探そうとするでしょう。でも健常者であるあなたは、なかなか探せないはずです。なぜなら車椅子ユーザーの視点が全く分からないからです。

 

段差はないのか?多目的トイレがあるのか?店内の通路は通れるのか?店内のテーブルは車椅子で利用できるのか?車で行くとするならば専用の駐車場があるのか?などいろいろな視点が出てくるでしょう。

 

そのため、健常者だけで考えても、すべてが机上の空論となってしまいます。むしろ一緒に働いている同僚の車椅子ユーザーにどういったバリアフリーのポイントが必要なのか聞いてみるといいでしょう。もし都合が合うのであれば、車椅子ユーザーと一緒に現地を見学しに行けばいいのです。きっと新たな発見があるはずです。

 

そういった部分で相手を理解することが、いろいろなポイントに気づいて、関心をもつことにつながるからです。もう「障害者をかわいそう」というような見方をしなくなるでしょう。お互いに同僚として仲良くなることができるはずです。

 

大切なのは、お互いを尊重していくことです。

 

 

4.見方が変わると勝手なイメージがなくなる

車椅子を利用している方に対する見方が変わっていくと、どうすれば店舗や職場で気軽に接することができるのか?利用することができるのかが自ずと分かってきます。

 

明らかに今まで持っていた既成概念が解消されてくるはずです。「障害者だから○○」とか「車椅子利用者だから○○」といった勝手なイメージが取り除かれるでしょう。

 

さらに車椅子利用者でもこういったことができるのではないか?とプラスの発想に変わるはずです。そのプラスの発想は、日常生活だけでなくビジネスでも役立つものだと思っております。

 

店舗の場合であれば、車椅子を利用している方にとって、どういう部分がバリアになっていて、どういう改善をすれば利用しやすくなるとか、どういった視点で接客をしたらいいのだろうか?関心が湧いてくると思います。

 

未だにバリアフリーの整ったお店が少ない状態です。そのため、車椅子でも気軽に利用できるお店があると、明らかに車椅子利用者から「選ばれる」お店になるはずです。そうなれば客数増に大きく貢献するでしょう。また人に優しい店舗としても評価を受けるかもしれません。

 

職場の場合であれば、車椅子を利用している同僚がどういう通勤をしていて、職場内に車椅子で通れる通路がきちんと確保されていて、どういった机が使いやすいかなど関心が湧いてくると思います。

 

さらに職場のコミュニケーションも円滑になるケースが多いと言われています。お互いにフォローしあう環境などが生まれてくると、ギスギスした職場環境ではなく、風通しのいい職場環境になるはずです。

 

風通しのいい職場環境こそが、チームビルディングにつながり仕事への成果が出てくるにちがいありません。世の中ではブラックだとかパワハラだとか暗いキーワードがある中で、そういった笑顔のある明るい職場になっていくにちがいありません。まさに今こそプラスに変えるチャンスでもあります。

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