企業で活躍できる人材に育成できる障害者雇用のポイント

私は、1995年イオンリテール㈱(旧:ジャスコ㈱)入社して、22年間サラリーマン生活を過ごしました。ところが入社して1年後の24歳のときに、スクーターでもらい事故に遭い、医師から一生車椅子生活の宣告を受けました。なんとか必死のリハビリ生活を経て職場復帰し、38歳のときに、会社始まって以来の「車椅子の人事総務課長」として就任することができました。

 

従業員の働きやすい職場環境へと改善し、お客さまへのサービスレベルを大幅に向上させることができた結果、2013年にはイオンリテール全店舗の中で、顧客満足度で全国1位の店舗として表彰を受けました。決して車椅子ユーザーだからできないわけではありません。立ちはだかるバリアを解消すれば、できることはたくさんあります。

 

でも順風満帆ではありませんでした。でも「担当者のままでは終わりたくない!いつかは出世したい!」と思って、いろいろなことを挑戦しました。もちろん理解していただけないことも多々ありましたが、車椅子ユーザーでも活躍できる環境になりました。

 

現在、車椅子ユーザーとして勤務している、もしくはこれから就職する皆さま、諦めることはありません!会社のために頑張っていけば、きっと分かってくれる人はいるはずです。そしてチャンスはきっと訪れるでしょう。

 

障害者雇用を考えている企業の皆さま、人材不足の現在だからこそ、優秀な障害者はたくさんいます。そんな方々を担当者のままに据えているのはもったいない!むしろきちんと能力を発揮できる環境さえつくっていけば、きっと活躍できる人材をつくっていけるはずです。ぜひとも既成概念を変えて、新しい障害者雇用の仕組みを作ってみませんか?

 

[目次]

 

1.法定雇用率における障害者雇用達成企業は約半分

現在は障害者雇用促進法という法律の中で、従業員数の多い企業においては障害者の雇用を義務付けられております。民間企業においての法定雇用率は2.2%です。

 

つまり45.5人以上の従業員のいる企業においては、1人の障害者を雇用しなければなりません。つまり約半数の企業が法定雇用率の未達という状態です。2.2%を未達の企業においては、不足人数1人につき毎月5万円の納付金を支払うというペナルティが課されます。

 

逆に2.2%以上の企業については、2.2%を超えた人数につき月に2万7千円の調整金をもらえるといった形になっております。残念ながら売り手市場という人材不足が続く中で、障害者の雇用が進んでいない現状が見受けられます。

 

その理由としては、いくつかの理由が挙げられております。(厚生労働省の「障害者雇用実態調査」(5年に1度))主な理由としましては、「社内に適当な仕事がない」「職場の安全性の配慮が適切にできない」「採用時に適正能力を十分に把握していない」などが企業からの回答となっております。

 

企業が障害者を選考する際に、どうしても手段についてクローズアップしてしまう傾向があるようです。1人で通勤することが可能かどうか・社内でジャンパーに着替えをすることができるか・公共交通機関を利用した通勤が可能かどうかなど。

 

もちろん、選考する際には確認する事項としては仕方がないのかもしれませんが、どうしてもネガティブな部分だけが取りざたされているようにも思えます。重要なのは、採用したら活躍できる人材に育つかどうかだと思います。

 

やはり採用しているからこそ、障害者が活躍できるステージに立てるような職場環境を創る必要がありますし、それゆえに企業側にとっても活躍していただければ人件費というコストに見合った価値が見いだせるのではないでしょうか?

 

 

2.活躍できるステージを見つけることが重要なポイント

最近では障害者の雇用が積極的に行われてきておりますが、残念ながら退職される方も後を絶たないと聞いております。その理由はいったいなぜなのでしょうか?

 

障害者の退職理由の大きな部分を占めているのが、「賃金や労働条件に不満」「職場の雰囲気や人間関係」「仕事の内容が合わない」「会社の配慮が不十分」といったのはトップランクです。

 

障害者枠で入社したから賃金はそのままという理由をよく聞きます。企業としては活躍できるステージが作られておらず、いつまで経っても昇給はなし、役職も上がらないなどの不満をよく聞きます。

 

一般の健常者と同じように、障害者であっても頑張ればチャンスがあると思って入社しても「あなたは障害者枠だから」「あなたは○○できない」と決めつけられてしまって、チャンスが与えられないのはとても悔しいと思います。

 

そういったケースを避けるために、障害者枠に応募するのではなく、あえて一般枠に応募する障害者の方が増えております。せっかく入社したのだから活躍したい気持ちの表れです。

 

一般枠なら頑張ればチャンスを与えてくれるにちがいないという切なる願いです。でも残念ながらその希望にこたえてくれないという声が多いです。何とかして企業に貢献して自分の能力を発揮したいと思っていても、企業としては応えようとしていないのは、とてももったいないと思っております。

 

最近ではその実態をさらに避けるために、自分自身の能力に応じて判断してくれる士業を目指す障害者も増えています。公認会計士・税理士・社会保険労務士などです。そうなれば自分の能力を発揮すれば、それに見合った報酬を手に入れることができると考えるようです。

 

このような気持ちを企業の方々はご存知でしょうか?せっかく採用をしたのであれば、企業の中で活躍できる人材に育てることが、企業にとっては大きな貢献につながります。

 

能力をもった方々はたくさんいるはずです。その芽をつぶしてはいませんか?今こそ活躍できる人材が埋もれたままになっているのを掘り起こしてみてはいかがでしょうか?

 

 

3.障害者の立場にたって考えることが職場の環境を変える

障害者を雇うということは、何に困っているかを本人からきちんと聞く必要があります。実際に何も聞かないでいると、障害者本人がとても使いづらいと思っているケースがあっても我慢していることが多くあります。

 

そのためには、相手の立場にたった職場環境の構築が必要となります。なぜなら、障害者が勤務するということは、トイレだけでなく、駐車場・通路・机の高さ・エレベーター・引き出しなどのハード面やその方が持っている病気や体調などを理解していただきたいと思っております。

 

働きやすさを解消しないと、効率の悪い仕事場になり、ストレスを感じる仕事場になる場合も出てきます。逆を言えば、一つ一つの問題を解消すれば、一般の健常者にとっても働きやすい職場となり、効率のアップが可能になります。

 

チームも盛り上がることで、従業員満足につながります。私自身は昇格した後に、とにかく効率のいい職場環境を自分自身で作りました。引き出し一つとってもすぐとれる場所に変えました。なるべく移動しないでできるようにすることで大幅に時間のムダを削減しました。

 

私が車椅子ユーザーとして復帰したときに大変だったのは、机の高さでした。一般的な事務用机のサイズは、車椅子に乗ったままではどうしても膝が当たる高さとなっておりました。

 

当時、関東本部の人事課長が私のためにパソコン用机を用意してくれました。本当にありがたかったです。この配慮がなければ、パソコンで入力する際に、辛い体勢のままやらざるを得ませんでした。

 

そうなれば仕事の効率が低下するばかりか、パソコンを入力する姿勢にも無理が生じます。人事課長と話をする機会があって、「困っていることはありませんか?」と質問をして下さった事で実現しました。

 

私はこのパソコン机を導入していただき、パソコン入力がとてもスムーズになりました。机は5万円前後したと思いますが、私の人件費におけるパフォーマンスを考えた場合、その5万円は仕事の効率ですぐに取り戻すことができました。

 

ここで重要なのは、障害者の採用において「健常者には分からない障害者の不具合をヒアリングすること」です。そのためには、日ごろのコミュニケーションをとっておく必要があるということです。

 

よくある話では、障害者の採用をしてもその後は全く会話がないという状況も起きているようです。その部分に耐えられなくて、障害者の退職理由の1つに挙がっていることも確かです。

 

直接のコミュニケーションだけでなく、会社では毎月実施している安全衛生委員会などで従業員の職場環境について取り上げてみるのもいいのではないでしょうか?コスト面で改善するのは難しい部分もあると思いますが、まずは声を聞くところから職場環境を改善できるはずです。

 

お互いに本音で話せる職場になるためには、チームの力がとても重要です。障害の有無に関わらず、相手を思い遣ることを大事にすることで、風通しのいい職場になるはずです。

 

相手のマイナス面を見て指摘をする風土が高まっています。でも人は自分とは違うものです。価値観や考え方が違います。

 

相手のプラス面を見て尊重していくことが、仕事の幅を増やしていき、障害者にとっても「できる」仕事が多くなれば、活躍できるステージに登っていくことが可能になるでしょう。

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