なぜ私が「バリアフリー」を仕事にしているのか?

1.車椅子生活をして初めての宿泊

 

私は1996年9月1日にスクーターによるもらい事故により、脊髄損傷となり、それ以来車椅子生活をしております。それから20年以上が経過しましたが、あることをきっかけに、バリアフリーへの興味が湧いてきました。

 

そのきっかけとなったのが、2003年頃に横浜にある有名一流ホテルに泊まったことです。当時は今のように体力がなく、目的地である伊豆に直接行くことができませんでした。そのため茨城と伊豆の中間地点である横浜に、バリアフリールームがあるという情報を知ったので、宿泊することに決めました。

 

いざバリアフリールームに入ってみると、車椅子でトイレにも風呂場にも入れませんでした。そしてバスルームの入口には、段差があって、車椅子の幅より狭い引き戸になっておりました。単なる一般の部屋が広くなっただけのものでした。

 

フロントにそのことを伝えて「部屋を変えてもらえませんか?」と話をしましたが、「我慢してください」の言葉が返ってきました。当時はバリアフリールーム自体が少ない時代で、他のホテルを探すこともできない状況だったことから、トイレの代わりにペットボトルを利用して対応することになりました。

 

なんとか宿泊することはできたものの、バリアフリールームでないのに「バリアフリールーム」を紹介していることが気になってしまいました。

 

こういった誤った情報を解消していくためにも、車椅子ユーザー自身が実際に行ってみたスポットを情報発信していくことで、車椅子でも行くことができるスポットをお伝えすることができると思いました。それが私のバリアフリーに携わるきっかけとなりました。

2.全国のバリアフリースポットを調査

 

2005年から世の中に「ブログ」が流行り出しました。ホームぺージを作る手間がかからず、情報発信できるのは、とても便利だと思い、私も何か情報発信したいと思いました。ブログを通して、自分が訪れたバリアフリースポットを発信すれば、同じ境遇にある車椅子利用者やそのご家族のためになるのではないかと思いつきました。

 

初めの頃は、自分の住んでいる茨城周辺のスポットを発信していましたが、徐々に関東全域と広がっていきました。ところが何年か経ち、情報発信をしていて感じていたのが、近隣の情報は分かっても、全国各地の情報を掴んでいない点でした。例えば「北陸地方のバリアフリースポットを教えてください」と質問されても、全く答えられませんでした。バリアフリーの情報発信をしているにも関わらず、中途半端な状態から脱するために、全国各地の情報も調べたいと思うようになりました。

 

そして東北・中部・九州・沖縄・北海道と足を運ぶようになり、さらに2016年11月には27日間かけて日本1周を実施しました。おかげさまで延べ1000件以上の全国のバリアフリースポットを調査して、情報発信することができました。

3.起業して「バリアフリースタイル」を設立

 

1995年イオンリテール㈱【旧:ジャスコ㈱】入社してから、交通事故によるリハビリ生活を経て職場復帰しました。その後、売上を上げるにはどうしたらいいか、従業員の働きやすい職場環境をつくるためにどうしたらいいかなどをいろいろと考えてきました。

 

そして38歳のときに、会社始まって以来の「車椅子の人事総務課長」として就任することができました。そのときに感じていたのは、お客さまに満足していただくためには、従業員の働く満足があってモチベーションが上がることだと思ったのです。まさに「ES(従業員満足)なくしてCS(お客さま満足)なし」です。

 

その際、自分が中心となって、店舗の全従業員と一緒に、近隣の競合店を視察に行き、自分たちのお店が劣っている点、逆に自分たちのお店が優れている点などをいろいろと話し合いました。そして自分たちの理想のお店をつくるためにはどうしたらいいかを考える活動を何年も続けました。

 

すると自然に、「自分のお店をもっと盛り上げたい」と思う従業員がどんどん増えていきました。そして従業員のモチベーションが上がり、店舗のコミュニケーションもよくなり、お客さまに対しても評判のいいお店になりました。

 

その結果、従業員の働きやすい職場環境へと改善し、お客さまへのサービスレベルが大幅に向上しました。そして念願だった顧客満足度調査で全国1位の店舗として表彰されました。本当にうれしい出来事で、従業員が一丸となって掴んだ成果だと思いました。

 

その一方で、私の中では、モヤモヤしているものもありました。将来このままサラリーマンとして仕事を続けていくことに疑問がありました。今まで仕事の傍らでやっているバリアフリーをビジネスにすることができないかという点です。

 

今やっている人事総務課長の仕事は、私でなくてもできるだろうけれど、バリアフリーにおいては私だからできると思いました。それならば一生の中で80歳まで生きると考えたら、残りの半分の人生は、会社の中で仕事をするよりも、誰かのために喜ばれる仕事をしたいと思う気持ちが強くなりました。

 

その背景には、高齢化も進み、車椅子利用の人は増え続けていても、それに対応できているお店って、それほど多くはないのです。そこで長年バリアフリースポットを調査した経験と、会社の中で「ES(従業員満足)なくしてCS(お客さま満足)なし」を実践してきた経験を存分に活かしたビジネスをしたいと思いました。

 

地域において年齢や障害があっても気軽に暮らせる、社会貢献につながるようなお店を造ってみたい考えていらっしゃる経営者の皆さまに、私のノウハウをお伝えしてサポートしていきたいという想いと、車椅子を利用されている方の笑顔をもっと増やしたいという想いが強くなり、22年間働いたイオンリテール㈱を退職し、自分の誕生日に合わせて2017年8月8日に「バリアフリースタイル」を設立しました。

 

「健常者の目」「車椅子ユーザーの目」そして「企業のお客さま対応責任者の目」という3つの目線を持って、車椅子でも利用できる環境を増やすために、小売店・飲食店・宿泊施設等の商業施設へのアドバイスならびに従業員教育・研修をしております。そして車椅子を利用されているお客さまが、たくさん集まって、売上が上がり、さらに社会貢献にもつながるようなお店を造りたいと思っています。

 

そのような想いで、日々真剣にこの仕事と向き合っています。

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