会社でパフォーマンスを発揮したい ~素早く書き留めるコツ~
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あなたのお店の『バリア解消』請負人 バリアフリースタイル代表の白倉栄一です。今回はいつものコラムと違って、自分の経験における仕事スキルについてご参考になればと思い、お伝えします。私は車椅子ユーザーですので、自分が頑張ろうと思っても、「車椅子に乗っているからハンディキャップがある」と周りから見られたくなかったという気持ちが強かったものです。だからこそ、車椅子生活になって仕事のパフォーマンスを上げていくには、どうしたらいいかを常に考えました。現実において車椅子に乗っている生活は、他の同僚と同じようにいろいろな業務をこなすことができるわけではありません。でもどうしたら周りから認められる存在になれるのか必死でした。
できない仕事は参加型、できる仕事は積極型で取り組む
そんな環境の中で考え抜いた結果、「できない仕事でもあえて断らない」ことでした。でもパフォーマンスを上げられないのは分かっているので、参加しようとする気持ちだけは常に持ち続けることでした。例えば、レジ応援などの業務は、私が応援に入っても素早くこなすことはできません。それでもレジ教育には参加する。そしていざというときには、レジ応援ができなくても、チームのメンバーを応援しようと思っておりました。「自分が事務所に残って電話番をするから、みんな頑張って!」という気持ちでした。
逆に「できる仕事については、周りの人よりパフォーマンスを発揮する」ことだと思っていました。例えば、身近な業務であれば、パソコン入力のスピードを一般の人より早く入力するテクニックを身につけました。自宅では市販のパソコン入力ソフトを必死にトレーニングすることで、身体に覚えこませることができました。
もちろん私より障害が重い人であれば、難しいことは多いのかもしれません。それでも大事なことは、業務の棚卸をして、残存機能を発揮できる業務、つまり自分でもできる業務については、徹底的にやり抜くことでスキルアップにつながるでしょう。手足を使わなくても、素早い判断を出すことができるとか、丁寧な電話応対ができるとか探してみることです。そしてその仕事をやらせてもらえるように上司と交渉することも必要かもしれません。そうすることで自分の居場所を掴むことができると思います。
私の中では、仕事をスムーズにこなしていくためには、どんな方法があるかいろいろと考えました。その中で1つ武器になったのが「素早く書き留める」ことです。「そんなことって当たり前です」という声もあるかと思いますが、あくまでも人よりもスピードを上げることにこだわりをもっていますので、いろいろな方法を踏まえていました。
相手の言葉を猛スピードで書き留めることが役立つ
どのようなシーンにおいても、相手の言葉をきちんと把握することは大事なポイントです。聴き漏らせばトラブルに発展してしまうこともよくあるものです。しかも口頭で述べれば、書き留めるのはかなり難しいものです。殴り書きでもいいので、ポイントを押さえて書き留めるテクニックをご紹介します。
まずどんなときに役立つのかが知りたいところでしょう。例えば、お客さまからのご意見やクレームに対して、素早く書き留めることができます。クレームに関しては、まさにマシンガントークのようなスピードで一方的に捲し立てて話されることが多いです。状況によっては、事実以外のこと、つまり感情によって話が大きく盛られることもたびたびあります。その際でも発生した事実と相手の思いを正確に書き留めていかなければなりません。
聞き取れない場合は、「もう一度おっしゃっていただけませんか?」と言わざるを得ない場合もありますが、クレームの場合には「お前、俺の話を聴いていないのか?」と怒鳴ってくることがほとんどです。そういった部分を少なくするためにも、素早く書き留めるテクニックがあればかなり助かるでしょう。意外とこういった場面に遭遇するので身につけておくことをおすすめします。
次に上司から仕事の説明を受ける場合です。業務内容を上司が伝えようとしているのに聞き取れないと、クレームと同様に上司が怒鳴り出してくることがあります。だからといって、聞き取れないまま放置していると、あとになって「こないだ説明したのになぜ覚えていないんだ」ということにもなりかねます。覚えていない、できないは信用を失くしてしまう可能性があるので、十分注意が必要です。
実はこう見えて、学生時代の私はまったく素早く書き留められない1人でした。よくやっていたのが、その場で書き留められないから、録音して授業に臨んでいたことがあります。これはとにかく時間のムダです。生で聴いた上で、帰ってから聴くので倍の時間がかかります。一見すると2度聴くから効果があるのでは?と思いがちですが、「あとで録音したのを聴けばいいや」となってしまうため、生で聴くときの集中力が下がってしまいます。そのため効果はあまりありません。
1度教わったことをもう一度聞かないために油断はしない
そしてサラリーマンになりました。障害者になって復帰した職場の上司が「歩く辞典」のような人でした。この人との出会いが私の「素早く書き留める」転機となりました。とにかく総務・人事については、すべて頭の中に入っている人でした。本部で仕事をしていただけあって、社内マニュアルなども作っていた経験があったようです。だから何でも知っていらっしゃいました。
私は復帰したばかりでしたし、元々の職場は野菜・果物売場でしたので、総務の部署は全く経験がありませんでした。でも復帰したら言い訳はできません。「車椅子に乗っているから…」と思われることも嫌でした。とにかく何でも吸収してすぐに即戦力にならないといけないと思う毎日でした。その上司からいろいろな知識を学ぶにあたって、その方独特の流儀がありました。それは「1度教えたことは2度と教えない」ことでした。
頭の中で整理してから順序立てて教えてくれる人なので、教え方はすばらしいものでした。本当に分かりやすかったのを今でも覚えています。でも2度目がないので真剣勝負で臨んでいましたので、まさに集中力との闘いでした。もし後になってうっかり「もう一度教えてください」と申し出たら、「なぜ覚えていないの?」と怒鳴られるのは分かっていました。まわりの同僚はいつも怒鳴られていましたが、私はヒヤヒヤしながら絶対に忘れることのないように、メモをとることに全神経を集中しておりました。
おかげさまで1度も怒鳴られたことがなかったばかりか、1年半で10冊のノートになり、自分のノートがまさに辞典のようなものになりました。この10冊があれば、自分の身の回りの業務は自分で遂行できるものになりました。但し、この上司の教え方は、部下に教えるOJTとして緊張感を強く持たせることになり、本来は決していいものではありません。
もっと部下をリラックスさせて、部下の進捗状況をきちんと見ながら進めていくのが本来のOJTの在り方です。でも私的には緊張感をもって進められたことが何よりも成果でした。こうしてこの経験から書くスピードが一気に速くなりました。車椅子ユーザーとして復帰して2年経った26歳の頃の出来事です。
きれいに書くことよりもスピードに書くことを重視する
ではどうやって素早く書き留めるか?スピードが大事なために質重視ではないことです。つまり上手に書き留めすぎないことです。もちろん自分が書いた字が汚すぎては意味がありませんが、自分のノートですから自分があとから見て分かればいいのです。いかにスピードをあげて書き上げながら、自分が分かる字のレベルであれば大丈夫です。そうすることにより、短時間で書くことのできる字数が大幅にアップするはずです。
次に滑らかに記入することです。英語の綴りのように書いていくことがコツです。1字1字を上にあげる分だけスピードは遅くなります。いかに低空飛行のまま書き上げるかがポイントになります。さらに書きやすい水性ペンを用意することです。できるだけ万年筆のような書き味のものがおすすめです。筆圧をかけずに流れるように書くことのできるペンを選んでみてください。堅い油性のボールペンでは効果が出せないので注意してください。私の場合は「ぺんてるの『プラマン』」というペンをおすすめします。これは筆圧がかからないで、スムーズにかけるペンなので、長年愛用しています。
ペンが重要ならノートも重要です。私はできるだけ厚紙で挟んであるような堅いノートを使います。そうすると書いている時の安定性が増します。どんな場面で書くことになるかはわかりません。状況によっては机がない場所で記入することもありますし、いかなる場所でもスピード重視で書くには自分の書く環境、つまりノート選びも重要になります。私の場合は「コクヨの『キャンパスワイド』」をおすすめします。厚紙がついているので、安定性も抜群です。他のノートよりはちょっと割高ですが、1000円とかするものではありません。気軽に購入する価格です。
決して高級なものを使っているわけではありませんが、値段が多少高くても使いやすい文房具を選ぶことで、仕事の効率が上がるのであればかなりお値打ちな買い物になります。とにかく仕事を人よりパフォーマンスを上げるためのテクニックなのですから、自分が昇進したときの給料を考えれば損はしていないはずです。自分にとって使いやすい文房具を選ぶことをおすすめします。いかに道具によってパワーアップするのも1つの手段であると思っています。
自分があとでノートを見て分かればそれでいい
記入方法については、できるだけ漢字を省くことです。簡単な漢字ならともかく画数の多い漢字は素早く書きとる時間のロスになります。例えば、総務という字であれば「総ム」でもいいですし、「ソウム」「ソーム」でもいいわけです。あとで自分がパッとみて分かればいいんです。もしどうしても漢字を書くならば、草書のような書き方がいいでしょう。
その他では、発言者の全てを書こうとしないことです。その中でも省く対象とするならば、「ひじょうに」「とても」のような形容詞や「つまり」「だから」のような接続詞などは出来るだけ書かないことです。もし接続詞が必要ならば、矢印の「→」で表記したらいいでしょう。あとでノートを振り返った時に、発言者が言いたかったことは何だったのかがパッと見て、頭に入りやすくなります。
また発言者が何を伝えたいのかを聴きながら、頭の中で整理していくことでムダな字が省けるはずです。特に重要なことは聴きながら、◎とか★とかのマークをつけていきます。だから多色ペンのようなものは一切不要です。途中で黒ペンから赤ペンに変えたりするのは、時間のロスになります。また書き間違いがあっても、できるだけ修正ペンや修正ローラーなどはその場で使わないことです。
その場ではなるべく二重線を引いておく程度にしておき、自宅に帰ってから見た目が悪いと思ったら、その時に修正ペンや修正ローラーを使うことをおすすめします。自宅に帰ってからは一度書いたものを覚える作業に変わります。そこでは振り返るときに、蛍光ペンや赤ペンを使って目立たせるのは、別に構いません。あくまでも発言者の内容を素早く聴き取ることが目的なので、その後については自分のやりたい方法で覚えるのがいいでしょう。
障害者であっても昇進・出世のための戦略は考えて臨む
私のオリジナルのスピードノート術をお伝えしました。スピード重視で仕事をしていた私にとっては、残業もしたくない・効率を上げたいと思って常に臨んでいました。ノート術だけではありませんが、いかなるものもスピードを上げていくことが、周りの同僚たちに勝てるテクニックだと思っておりました。
決して勝ち負けだけが重要ではないことは分かっておりますが、障害があっても昇進したい、出世をしたいと思えばこそ、人よりのパフォーマンスを出さないと実現しないと思っておりました。自分の価値を上げていくためには、同じ土俵で戦えるものについては、絶対にその上を行くための戦略を考えました。もしご参考になればと思って、あえてお伝えすることにしました。
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