段差・勾配を体験する車椅子試乗体験の効果の有無とは?
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車椅子ライフデザイナーのまおうです。最近は福祉系のイベントでよくあるのが「車椅子の試乗体験」です。この体験を通して車椅子利用者の事を知っていただきたいという主旨の下で行っていると思いますが、短時間での試乗については逆効果であるのではないかという意見が出ています。それは一体どういうことなのでしょうか?
短時間での体験会は辛さを助長することも
一般の健常者に病院などにある介助型の車椅子に試乗してもらい、段差・板で作った勾配(上り坂と下り坂)・グレーチング(排水路をふさぐ溝)を設置するような体験コーナーを実施しているケースが多いです。主にお子さんを中心に体験してもらう企画になっています。車椅子目線を知ってもらうためにはいい企画のように思えます。
ところが実際に短時間での車椅子試乗については、「車椅子利用者はこんなに大変な思いをして乗っているんだ」という気持ちを助長させてしまうという結果につながるとある大学の先生が話しておりました。しかもその体験コーナーに車椅子ユーザーがそばにいれば実際の経験談などを述べることができますが、当事者不在になる場合が多くみられます。
先日そばで見ていたら、担当者の方は「車椅子に乗っているとこんなに大変なんですよ」と言っていました。その指導を受けた人は「だから助けてあげなければ」「辛い思いをして生活しているんだ」と思ってしまいがちです。でも実際の車椅子ユーザーからすると、そういう見方で見られてしまうのはちょっと違和感を感じてしまいます。
私も一度試乗体験を行ったことで経験した
私も以前友人に対して車椅子試乗体験を行いました。その時までは試乗することがいいと判断しておりましたが、終わってみると「車椅子の人って大変なんだ」と大変さを助長させてしまう結果になりました。受講していただいた友人の中には、車椅子利用者を見たら助けてあげなくちゃという気持ちが強くなってしまったことに反省しました。
私が今まで学んだセミナーによると、車椅子の試乗体験そのものが良くないということではなく、やり方次第であると言われております。ポイントはある程度の時間での試乗体験を行うことです。車椅子ユーザーの操作にある程度慣れた上で車椅子を利用する立場を知るのは、ものすごく効果があると言われております。
さらに車椅子ユーザーの当事者がそばにいることで、実際に使っている人の声を踏まえるということです。車椅子ユーザーは操作そのものには身体が慣れていることもあり、わざわざ助けをもらわなくても自分でできることもある点もお伝えできると思います。つまり操作が慣れていないから大変だと思ってしまう点は取り除けるはずです。
共生社会になるために必要なことは
車椅子ユーザーの気持ちを知っていただく機会になることは、ものすごく大事なことだと思っています。しかし車椅子ユーザーに対して大変だと思う気持ちが助長されてしまうのはズレになってしまいがちです。今後において障害者と健常者との共生社会になっていくためには、相手に対する見方が一番の課題になります。お互いに同じ立場で考えられる社会になることを願っております。
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