車椅子ユーザーになって手動運転装置で車を運転するまでの過程とは?
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車椅子ライフデザイナーのまおうです。肢体不自由なために手動運転装置で運転をしていますが、どうやって運転技術を学んだのかよく人から訊かれます。多分、一般の人からすると不思議な内容だと思いますので、今回は私が経験した手動運転装置の運転技術についてご紹介します。
手動運転するには通常の普通免許があればいい
まず手動運転について別途免許が要るのでは?という声がありますが、通常の普通免許を所持していれば障害の有無に関わらず運転することが可能です。但し、今までは足でアクセル・ブレーキを踏んでいたものを、手で対応するには全く感覚が違います。そのために専門の場所で練習をすることが必要になります。
私が入院していたのは、埼玉県所沢市にある国立身体障害者リハビリテーションセンターです。日本で一番大きいリハビリテーション施設です。病院・スポーツ施設・職業リハビリテーションセンター・研究施設など様々な施設があります。その中に運転教習の施設がありました。
但し、この教習所施設は新たに運転免許を取得することができません。そのため運転免許を所持していない人は、一般の教習所(手動運転装置の教習ができる場所)などに通い、都道府県の免許センターで受験をしなければなりません。私はすでに運転免許を所持していましたので、入院していた施設で車の手動運転の練習をすることができました。
リハビリプログラムの最終段階で教習訓練がある
この施設で受講するのは、様々なリハビリをする中で最終段階となります。入院直後は車椅子操作になれたり、日常生活(トイレ・風呂など)のトレーニングになります。そしてスポーツやリハビリを通して身体が出来上がってからになるため、6ヶ月間の入院期間の中で一番最後のプログラムとなりました。
その前にPT室に古い動かない車があり、その車への乗り移り練習をします。運転席・助手席・後部座席への乗り移りを理学療法士の先生が教えてくれました。頸椎損傷の方などはトランスファーボード(乗り移り用の板)を使用します。この乗り移りができないと実際の運転訓練には出ることができません。
乗り移りができて初めて手動運転の練習になります。教習車に教官が乗り込み、教習所内を運転します。まず初めにアクセル・ブレーキが手動になることで身体に覚えこませることです。押せばブレーキ、引けばアクセルといった形になりますが、頭の中で考えているようでは運転ができません。逆に操作したら大変なことになります。
手と足の感覚の違いは身体で覚えていく
慣れてきたらどれだけ足との感覚が違うのか、思いっきりアクセルを引いて、急ブレーキをかける体験テストを行います。さらに水をまいたうえでどれだけ強くブレーキをかけなければいけないのかを学びます。どうしても慣れないとブレーキが甘いんです。とにかく身体に覚えこませることが重要なポイントです。
教習所内の運転が一通り終えたら、路上に行き運転技術を磨きます。この行程を2週間くらいやったところで終了となります。イメージ的にはまさに自動車教習所へ通うような感覚です。でも教習所と違うのは、すでに免許を所持しているのでルールではなく、運転テクニックを学びます。
手動運転装置を発明した人がいて今の生活がある
退院後には都道府県の運転免許センターに行き、「手動に限る」という免許の切り替えを行いました。あとは自分の車に手動運転装置をつけるだけです。現在では固定式のものもあれば取り外し可能なものもあります。私は日常運転する車は固定式(ミクニライフ&オート社)を取り付けて、旅行先でレンタカーを借りる際には取り外し可能式(ニコドライブ社)を利用します。
障害があっても車を運転できるときだけは、健常者に戻ったような清々しさを感じます。そして行動範囲がものすごく広がります。手動運転装置を発明した方がいたからこそ、肢体不自由の私のような立場でも今のような生活ができると思っています。とても感謝しております。
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