「バリアフリー化しても失敗する理由とは?“設備+心”が揃って初めて伝わる本当のサービス」
バリアフリーアドバイザーの白倉栄一です。
店舗などの商業施設がバリアフリー化されたにもかかわらず、利用者からの評判が下がってしまうケースがあります。
せっかく費用をかけて整備したのに、非常にもったいない結果です。
では、そうならないためには何が必要なのか。今回はそのポイントをお伝えします。
期待を裏切る最大の要因は「マインド」の欠如
原因の多くは、設備が整っている一方で、従業員の接客・応対マインドが不足していることです。
たとえば料理がいくら美味しくても、接客態度が悪ければ、もう行きたくないと感じるでしょう。
それと同じで、どれほど立派なバリアフリー設備があっても、対応する人の意識が伴っていなければ、利用者の満足度は上がりません。
このような場合、問題は個人ではなく組織の体質であることが多いです。
「態度」ではなく、「働く環境」や「職場文化」が停滞していて、チーム全体としてサービスレベルが向上しないのです。
そこで必要なのがチームビルディングです。
従業員のモチベーションが上がってこそ、顧客への対応力が高まります。
バリアフリーを本当にビジネスツールにしたいのであれば、設備だけでなく、従業員教育やチーム作りが不可欠です。
バリアフリーのノウハウを習得することで、他の店舗と明確に差別化され、「また来たい」と思われる店になります。
現場でガッカリされると、バリアフリーは逆効果に
実際に起きた事例をご紹介します。
ある有名神社は、珍しく設備がバリアフリー対応されており、多目的トイレも整っていました。
しかし、目的地へ向かう通路には大きな玉石が敷かれており、車椅子にとっては非常に危険な環境でした。
転倒すれば大けがに直結する場所にもかかわらず、案内する神主の方々は、無関心のままでした。
「足元にご注意ください」といったひと言の配慮もありません。
さらに、障害者用駐車スペースの利用を申し出た際も、車椅子利用者を降ろした後は車を別の場所に移動するよう求められました。
それも命令口調で、「嫌なら来なくて結構です」と言わんばかりの対応です。
これは設備だけ整えた典型的な「ハード偏重型」の失敗例です。
いくら設備が良くても、マインドが欠如していれば逆効果になります。
利用者が「ここなら行ける」と期待して来たにもかかわらず、現地で失望すればリピーターにはなりません。
むしろ、悪い口コミが広がってしまう恐れすらあります。
「設備×こころの設計」が真のバリアフリーをつくる
真に効果のあるバリアフリーを実現するには、設備(ハード)+マインド(ソフト)の両面が必要です。
まずは職場環境を整え、従業員が前向きに働ける環境づくりを行いましょう。
「また上司の説教か」と思われるような押し付けの方針ではなく、従業員が自ら考えて動けるチームを目指します。
「従業員満足(ES)」が高まれば、「お客さま満足(CS)」も自然と高まります。
結果として、「この店だからまた来たい」と思われる“真のバリアフリー施設”が完成するのです。
バリアフリーは社会貢献の道具であると同時に、収益を生むビジネスツールでもあります。
設備を整えた後は、ぜひ「こころの設計」にも力を注いでみてください。
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