「わかってるつもり」では伝わらない 車椅子ユーザーへの接客対応、実践できていますか?
バリアフリーアドバイザーの白倉栄一です。
高齢者や障害のある方など、車椅子を利用する人が急増している今、商業施設や店舗においても、スムーズな対応が求められる時代になってきました。
しかし、頭では「配慮しなければ」と理解していても、実際の現場でうまく対応できない人も多いのではないでしょうか?
今回は、ある講演会での実体験をもとに、「できているつもり」と「本当にできている」の違いについて考えてみたいと思います。
心では頷いても、行動ではスルーされる現実
あるイベントで、障害者スポーツに取り組むパラリンピアンの講演を聴いたときのこと。
「障害の有無に関係なく、気軽に声をかけ合える社会を目指したい」というメッセージに、会場の多くの人が頷いていました。
しかしその後、講演者が持参したメダルを観客に順番に回す場面で、私は明らかにスルーされてしまったのです。
「障害の有無に関わらず」という言葉には頷いていたはずなのに、その場で実践できなかった理由は何だったのか?
行動できない理由は「経験のなさ」と「思い込み」
なぜ実行できなかったのか。私なりに考えた3つの理由があります。
- 1. 話しかけづらい:腫れ物に触るような気がして距離を置いてしまう
- 2. 必要ないと思い込む:「回さなくてもいいだろう」と勝手に判断する
- 3. 視界に入らない:立っている人から見えにくい位置にいた
つまり、「差別しているつもりはない」けれど、配慮もできていない。
こうした無意識の行動こそが、バリアとなってしまうのです。
超高齢化社会では「対応できること」が強みになる
今後、ますます車椅子利用者は増えていくことが予想されます。
だからこそ、接客現場での「対応スキル」や「心の準備」が必要不可欠になります。
しかし、それをいきなり現場で求めるのは難しいのが現実。
まずは既成概念を取り除くことから始めてみてください。
- 「話しかけていいのかな?」という迷い
- 「サポートするのは失礼では?」という遠慮
- 「健常者とは違う存在」といった思い込み
こうした無意識のバリアを取り除くには、体験と対話が何よりも有効です。
まずは「慣れる」ことから始めよう
具体的には、以下のような取り組みが効果的です。
- 車椅子の試乗体験(疑似体験)
- 車椅子ユーザーとの交流会や職場内ミーティング
- ロールプレイング形式の接客練習
こうした取り組みは、心のバリアフリー教育として非常に有効です。
そしてこれこそが、設備投資よりも重要な“バリアフリー対応力”となり、高齢者・障害者を安心して迎え入れられるお店・施設づくりにつながります。
「実践できる人」になるための第一歩を
バリアフリーは「知っている」だけでは意味がありません。
「できる」ようになることこそ、本当の一歩です。
もし「自分たちでも何か取り組みたい」と思われた方がいれば、ぜひご相談ください。
“わかっているつもり”を卒業して、“実践できる現場”へ。
その積み重ねが、これからの時代に選ばれる企業・店舗の基盤になります。
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