日常生活やビジネスに役立つこころのバリアフリーの実践ポイント

2019.04.15 (月)

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これからの時代において「こころのバリアフリー」というキーワードは、日常生活だけでなく、ビジネスにも重要視されていく言葉です。こころのバリアフリーがきちんと運用できるかどうかによって、接客・応対などのシーンにおいて大きく変わっていきます。でもできるようになるためには、どうしても教育が欠かせません。そのためにはどのようなことをしていったらいいのかをご説明します。

 

私は総合スーパーで21年間勤務しておりました。店舗における人事・総務・採用・クレーム対応の責任者など行いましたが、やはり一番好きな業務は「従業員教育」でした。受けて下さる方々が私の教育を通して変わっていく姿を見るのが本当に嬉しく、やりがいのある仕事だと思えました。

 

それでも、従業員によって明るく笑顔で接客応対できる人もいれば、無理やり笑顔を作っている人、なかなか笑顔が出ない人など様々見てきました。これはどうしても難しい課題でした。

接客応対は相手の立場になって考えること

接客応対のうまくできるコツは、とにかくお客さまの立場になって考えることしかないと思っております。日常のお買物をしたときに「この店員さん、笑顔が全くないよね」「ムカついたような顔をしているよね」「○○してくださいと命令調で言うよね」とかいろいろと挙げたらきりがないはずです。

 

人間は、他の人のいやな部分をものすごく感じると思います。些細なことでもムカついたりしませんか?でも発想を変えてみるとどうでしょう。つまり、そういう風に自分が嫌だと感じることは決してしないことなんです。むしろ、そういう場面で「こうしてもらったら嬉しいよね」と常に思うことなんです。

 

ある食品スーパーの例を挙げますが、レジの方の対応はものすごく丁寧です。常にお客さまを気にかけてくれるんです。私のような車椅子利用者であってもとても親切な接客応対をしてくださいます。まさに相手の気持ちになって接客応対している姿がよく分かります。それが「接遇」なんです。

 

もちろん、自分が良かれと思って対応したことが反感を買うことはよくあります。人は確かに価値観が違いますから仕方がありません。でも良かれと思って対応したことは、ほとんどの人が理解をしてくれるはずです。

 

そしてお客さまが笑顔になってくれたら誰もが嬉しいはずです。その気持ちで、これから多くなる車椅子利用者に接してみてはいかがでしょうか?高齢化社会が訪れているので、間違いなく増えてきます。

 

車椅子の高さでは商品をとりにくいものや通路が通りにくいなどその人たちの視線に合わせた対応をしてみると自ずとやるべき接客応対ができると思っております。あとはその人の背景を想像してみることだと思います。なぜ自分のお店にお越しいただいたのかを常に思うことです。

 

例えば、駅からお店まで車椅子を必死に漕いできたかもしれません。他のお店に行っては「ない」と断られやっと見つけたお店だったとかお孫さんの喜ぶ顔を見たいために、お孫さんの好きな文房具を購入しにいらっしゃったとか・・・。

 

そういった背景からお客さまと会話ができて、「せっかく当店へお越しいただいてありがとうございます」とすんなり言えるようになれば、お客さまは間違いなく嬉しいはずです。そして自分も嬉しいはずです。こういったことを考えていくとより「接遇」に近づき、お客さまに愛されるお店になると思います

相手に対して「○○してあげたい」と思う気持ちが大切

ちょっとしたことで、従業員の接客応対におけるクレームは多発していました。そうすると「責任者を出せ!」の一点張り。そして私がその現場へ向かうというのが、お決まりのパターンになっていました。そこで今後の時代を踏まえて優しい接客応対をするポイントを考えてみたいと思います。

 

大概は丁寧な話し方やあいさつの仕方における問題です。しかももともと笑っていないから、余計に話し方やあいさつも悪くとらえられてしまうんです。本人は至って普通にやっているのですが、残念ながら、普通に見えない部分があるんです。

 

お客さま満足度調査などの結果を見ると、どうしても上位に評価されている人は、店内における接客態度も評判のいい人です。また従業員同士の応対においても同様です。下位に評価されている人であっても、むしろ接客がやりたいと思って入社しているケースがほとんどです。

 

残念ながら自分のパフォーマンスを発揮することが出来ていないんです。本人がやりたいというのと、実際のやっている態度に矛盾があることが考えられます。そこでポイントなるのは、まず鏡だと思います。鏡を見て自分は笑顔でお客さまを迎えているかどうかのチェックをしてみることです。

 

人は笑えば、人から好かれる顔をしているはずです。俳優の竹中直人さんの芸にもあるように、笑いながら怒る人はそういないです。つまり、楽しかった思い出などを浮かべて鏡を見ながらトレーニングする必要があります。

 

苦手なものは、訓練するしかないのが事実です。そして自分の笑顔が矯正できるまでやり続けることです。そうすることにより苦手だった笑顔も優しく柔和な笑顔に変わるはずです。接客応対については、自分がされて嬉しいことを思い浮かべるといいでしょう。

 

もちろん、自分の思いが伝わる場合ばかりではありませんが、大概は「〇〇してあげたい」という気持ちは相手に伝わるはずです。そうすれば、接客の時に悪いイメージはつかないものです。

 

むしろうさぎとかめのように、もともと得意な人は自然にこなしていくかもしれませんが、苦手な人が克服した時には、相手の気持ちが分かる人ということで、得意な人より優しい対応が出来ている場合があります。ここが努力というものだと思っております。

 

もし接客応対をやりたいと思っていても、お客さまからの評判があまり芳しくない場合は、「鏡を見て笑顔を矯正する」「○○してあげたい」という態度で接してみてください。「ローマは1日して成らず」という言葉があるように時間はかかるでしょう。

 

でも相手を思いやる気持ちの強ければ、更なるパフォーマンスが発揮されるはずです。今後は高齢のお客さまなどが増えてくる時代です。私のような車椅子を利用しているお客さまに対して、どれだけ丁寧かつ優しい対応ができるかが、選ばれるお店の基準になっていくと思います。

接客応対ができないのではなく、教育を受けていないことの課題

車椅子ユーザーの私にとって、バリアフリーな施設というのは利用してみたいという思いが強かったのは確かです。だからこそこの施設なら大丈夫という期待値が大きくなってしまったのかもしれません。

 

あるホテルは、バリアフリーの設備がものすごく整っていることをホームページで紹介していました。実際に車椅子の後ろにリュックをかけて、膝にはボストンバッグを置いて、ホテルのフロントで手続きをしました。その後、部屋を案内する人がフロントに来てくれました。

 

通常であれば「ボストンバッグをお持ちしましょうか?」と声をかけると思いますが、無言のまま荷物を持っていただくこともなく、部屋まで一緒に行くものの、部屋の中での操作説明などはなく、「何かあったらフロントへ連絡ください」と言うだけ。何のために部屋まで案内してくれたのかわからなかったのです。

 

夕食はコースになっていてホテルの中のレストランで食べることになりました。レストランのシェフは有名な方のようで、料理はかなり美味しかったんです。しかしそのスタッフの接客応対が酷かったんです。コース料理なので料理の説明をしますがほとんどなし。

 

さらに料理を食べ終わる前に、次々に料理を運んでくるんです。しかもほとんど無言のように置いていくんです。これはスタッフ1人だけでなく、すべての方が同じ接客応対だったのです。チェックアウトの際も丁寧な接客応対はありませんでした。

 

ホテルから駐車場までの道のりは、スロープがあったのにもかかわらず、荷物をお持ちしましょうか?とかは一切なし。しかも天候は猛吹雪。かなりきつい状況の中でホテルを後にしたのを憶えております。

 

私が思うには、接客応対が出来ないのではなく、接客応対の教育を受けていないことによるものではないでしょうか? 建物のバリアフリーがきちんと整っているにも関わらず、ソフト面における部分ができていないのは本当に残念でした。

 

大事なのはホスピタリティです。ホスピタリティとは「思いやり」「心のおもてなし」という意味です。サービス業には欠かせないものです。こういったところに今こそ、お客さま満足のためのサービスレベルを向上させていくために接客応対研修が必要だと思います。

 

そうすれば建物のバリアフリーとこころのバリアフリーが充実すれば、他の施設を寄せ付けないほどの凄いものが出来上がるのではないでしょうか?ぜひともそのような教育であれば、ぜひともお役に立てたいものです。

車椅子利用者に対するノウハウがあれば乗り切れる

車椅子利用者がいらっしゃった場合の接客応対について、レストランの場合を考えてみました。まずはレストランの入口を入った時の接客応対です。きちんとお客さまをお迎えする体制がとれているお店が大半ですが、たまにあるのは「好きなところに座ってください」と言われて全く接客応対をしないお店があります。

 

車椅子利用者は、椅子を動かさなければ席につけないので、「好きなところへ座ってください」という言い方は、かなり失礼な言い方になってしまうと思います。残念ながらこういったお店には、2度と行かないでしょう。

 

次にお客さまをお迎えする際のポイントです。私一人の場合ではなく、健常者の人と一緒に行った場合です。私がお店の従業員に質問をした場合に、私ではなく健常者の人に回答するケースがあります。

 

よくあるのが、お店の従業員の方が「何名様ですか?」と質問したら、私が「2名です」と答えます。その際、従業員が私の方を見ないで健常者の方に「2名ですね。こちらへご案内します」と言うケースです。これは最悪です。明らかに無視されている気になってしまいます。しかも車椅子利用者に目も合わせない場合があります。

 

さらに席へご案内する場合です。椅子を動かしてくださる場合がほとんどですが、「あちらへどうぞ」と言われてしまうケースもあります。結局、椅子は自分で動かします。これもマイナスポイントです。

 

その他気になるポイントは、車椅子利用者の大半は、自分が乗っている車椅子のまま食事をすると思いますが、一部の高齢の方などはお店の椅子に乗り移りたい場合もあります。「車椅子利用者=席を動かす」と決めつけないで、お客さまの思いを確認する方がいいと思います。

 

次の部分は、とても丁寧だと思うポイントです。食事の注文の際、お水がセルフサービスのケースです。店のマニュアルでは、お客さまが自分でお水をとりにいくという形になっているので、大半の従業員は、お客さまが車椅子利用者であっても、「お水はあそこにあります」とマニュアル通りに対応します。

 

でも従業員の方が「お水をもってきましょうか」と言っていただけると、すごく丁寧な接客応対をしていると思われるでしょう。そこにはマニュアルだけでは対応できないことがたくさんあるものです。

 

大切なことは、せっかくお越しいただいたお客さまに喜んでいただきたいと思えば、自分がお客さまの立場を考えて、「こうしてもらえば嬉しいだろう」、「こうされたらとても嫌だろう」と想像することでおのずとやるべき行動が見えてくると思っております。

 

先日は、世の中からいろいろと叩かれた居酒屋「和民」ですが、数年前に利用した際、席についてからの注文方法は、他のお店にはない感じの良い応対方法で感動しました。車椅子利用者と同じ高さの目線に合わせて、注文を受けるところです。

 

上から目線ではなく、同じ高さというのが優しさや温かさを感じます。接客は大事なポイントです。ちょっと嫌な思いをしたら2度と来なくなってしまうケースもあります。逆にきちんとした接客応対ができれば、他のお店との差別化を図れるサービスとなり、また行ってみたいと思うようになるものです。

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