車椅子のバリアフリーには引き戸のドアノブがNGとなる
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あなたのお店の『バリア解消請負人』バリアフリースタイル代表の白倉栄一です。これからお店をバリアフリーに改装しようと考えていらっしゃる場合、まずは入口のドアをスライド式のドアにしてみませんか?従来の引き戸であることは、車椅子を利用するお客さまにとって使いにくいものです。ちょっとしたことではありますが、引き戸になっていることで来店しにくくなるお客さまが存在することをご説明します。
体験してみれば分かることも多い
実際に車椅子に乗ってみることで検証するのがいいように思います。なぜならじっと車椅子利用者や杖をついている歩行困難な人を見続けている人ならば分かると思いますが、そうでない人にとっては車椅子に乗って見ないで、引き戸がダメな理由を感じることができないでしょう。
引き戸がダメな理由は、まず1つが押しても引いても車椅子操作に支障があるからです。片手を車椅子のハンドリムから手を放すので、残りの片手による走行になります。車椅子の操作は両方の手を使わないと前に進むことができません。そのため片手だけだと進行方向へ進むことができなくなってしまいます。
しかも引く場合は、車椅子を引かなければならないので、手前にある程度のスペースが必要になりますし、押す場合は勢いをつけないとドアを入れないのでテクニックが必要になるでしょう。まさに車椅子で社交ダンスをしているような動きが必要になります。これはとても難しいものです。
引き戸のドアノブは握力のない人にはつらい
次に一般の人にとっては何気なく回しているドアノブですが、握力がない頸椎損傷者や高齢者にとってはドアノブを回すのは難しくなります。ドアノブを回せないとドアは開かない構造になっているので、これでは明らかなバリアとなってしまいます。もし工夫するとなれば、下に押しただけでも開くようなレバータイプのものにするのがいいでしょう。
この回転式のドアノブについては、カナダでは、バリアフリーの観点において新築の建物に一切禁止する法律ができているようです。この回転式のドアノブは、頸椎損傷者だけでなく、高齢者にとっても厄介なものになると国が定めてしまっているのですからビックリです。
でもこうした具体的な対応がない限り、バリアフリーという抽象的なワードだけでは徹底できないのかもしれません。何気なくバリアフリーという言葉が先行することで、実際に行ってみたら全くバリアフリーになっておらず、あくまでも人の価値観によって、誤ったバリアフリーが造られてしまう課題がよくあるからです。
その人の立場になって考えてみる
まずはこうした引き戸の不便を知ることが必要です。ファミレスなどへ行くと、身障者用駐車スペース、多目的トイレ、通路幅も確保されて、テーブルの高さも車椅子で問題ないのに、なぜか入口だけが引き戸になっていることがよくあります。しかも風除室になっているので、2度引き戸を通らなければならないからものすごく厄介なものです。
そのためもし予算とスペースがあるのであれば、スライド式のドアへの検討をしてみるのはいかがでしょうか?もし難しいならば、車椅子利用のお客さまなどが来店されたとき、お帰りになるときに、従業員がドアを開けてあげるフォローがあると、とても人に優しいお店だと思われて、お客さまの立場からは「また来店したい」と思われるお店になるでしょう。そういった従業員教育も含めて、今後取り組んでいくことをおすすめします。
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