「段差だけじゃない!車椅子ユーザーが直面する“見えないバリア”とは」
バリアフリーアドバイザーの白倉栄一です。
車椅子の「バリア」と聞くと、段差や坂道を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
でも実際に車椅子を利用してみると、それだけではないことに気づきます。
細かな設計や路面状況など、意外な部分にも注意が必要なのです。
これからバリアフリー化を進めたいと考えている方には、ぜひ知っていただきたいポイントがあります。
今回はその具体例をご紹介します。
舗装してある道路でも「バリア」がある理由
車椅子に乗っている人が不便に感じる路面の例を挙げてみます。
舗装していても凹凸がある道路
舗装されていない土や砂利の道
石畳(神社やテーマパークなどに多い)
道路にあるグレーチング(排水溝の金属格子)
たとえ坂や段差がなかったとしても、上記のような要素があるだけで、バリアになってしまうのです。
舗装された道路も、一見スムーズに見えて実は走りにくいことがあります。
特に舗装が粗い道路では、車椅子の前輪(キャスター)が細かい振動をもろに受けてしまいます。
この衝撃が続くと、走行しづらくなるだけでなく、疲労や身体への負担にもつながります。
最近では、キャスターにサスペンションを搭載した車椅子も登場していますが、それでも限界があります。
未舗装路面や石畳は“進行不能ゾーン”になることも
舗装されていない道では、キャスターが土に沈み込んでしまい、スムーズに進めません。
石ころも障害となります。タイヤの隙間に挟まるとパンクする可能性もあります。
介助者がいればウィリーのようにキャスターを浮かせて進むことができますが、それも長距離では負担が大きくなります。
また、神社やテーマパークでよく見かける石畳も要注意です。
石と石の間に隙間があると、キャスターがはまり込んでロックされ、身体が前に投げ出されてしまうこともあります。
特に自力で支えが難しい方にとっては、膝を強打するなどの大けがにつながるリスクがあります。
グレーチングの隙間は「落とし穴」になる可能性も
グレーチング(排水溝の金属格子)も気をつけたいポイントです。
隙間が広いタイプでは、キャスターがハマってしまい転倒する危険性があります。
私自身も過去にこのような場面で、身の危険を感じたことがあります。
その経験以降、少しでも危険が感じられるときは、その場所を通るのを潔く断念するようにしています。
段差や坂道だけがバリアではないことが、これでよく分かっていただけたのではないでしょうか。
設計前に「車椅子での体験」をしてみることがカギ
社会にはまだまだ「見えないバリア」が多く残っています。
車椅子の特性を知っていれば、設計段階での配慮も可能になります。
おすすめなのは、車椅子ユーザーの声を直接聞くことや、実際に試乗してみること。
そうすれば、健常者の視点では気づけなかった不便さを体感できます。
せっかく整備にコストをかけるなら、誰もが安心して使える形にしたいものです。
ぜひ、設計や整備の前に「当事者の体験」を取り入れてみてください。
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