車椅子利用のトイレ施工における落とし穴には注意
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あなたのお店の『バリア解消』請負人
バリアフリースタイル代表の白倉栄-です。
お店にバリアフリーを取り入れていく
仕事をしている中で、
ファミレス・食品スーパー・コンビニなどの業種が、
徐々にバリアフリー化に
なってきているようにも感じます。
車椅子利用者の行動範囲が
広がっていくことはうれしいことなのですが、
残念ながら実際に現地へ出向くと
肝心な車椅子利用のお客さまが
全く使えない設備をよく見かけます。
一体なぜなんでしょうか?
あなたのお店の多目的トイレは本当に使えますか?
せっかくバリア解消の導入に
踏み込んだ経営者さんには、
そういった実態になっていることを
気づいていないのかもしれません。
なぜなら車椅子利用のお客さまから
「このトイレ使えませんでした」と
指摘されるわけではないからです。
私が前職にいたときは、
お客さまのクレーム対応の
責任者をやっておりましたが、
全てのお客さまが
お店・商品の不満を口にするわけではありませんでした。
むしろクレームをおっしゃるお客さまは、
不満に思っているお客さまの
10人に1人くらいではないでしょうか?
その1人のお客さまの声があることで、
やっと実態に気づくのかもしれません。
そして知らないうちに
残りの9人のお客さまは声に出さないで、
自店から去っていくこともあります。
先ほどの話に戻ると
使えないトイレの声が聞こえてこない中で、
実際にはお客さまの不満があるということです。
そこで問題になるのは、
「トイレ=使えない」となると、
もうお越しにならないことを意味するからです。
なぜならバリアフリーには
「トイレ」の有無が大事だからです。
実際に設計ミスのような多目的トイレをよく見かける
都内のあるコンビニでは、
車椅子・ベビーカーの皆さまどうぞと
いう掲示がトイレの前にされていました。
実際にトイレに入ったときに
「ちょっと狭いかな…」と思ったら、
トイレに入っても、
車椅子がトイレの中に収まりきらないことが分かりました。
これでは使用することができません。
しかも私のような自走式の車椅子で入れないのであれば、
一般的な介護用の車椅子はなおさら入ることができません。
このトイレは明らかな設計ミスです。
それでも最低160㎝×160㎝くらいあれば、
ギリギリの何とかなるスペースになるでしょう。
但し、これより小さなスペースになってしまうと、
車椅子から便器に乗り移ることが
難しくなるだけでなく、
車椅子のスペースすら確保できません。
このときに訪れたコンビニは、
140㎝×140㎝未満だったと思います。
だから肝心な車椅子から便器に乗り移るだけでなく、
トイレのドアを閉めることも
できなくなってしまったわけです。
でもこういったことは、
残念ながらよく見かけることです。
その他の例では、
トイレの流すボタンが後ろの壁にあるために、
便器に座ったまま水を流せない構造になっていたり、
手すりが便器の長さより長くて、
車椅子から便器に
乗り移れないようになっていたりします。
せっかくバリア解消のために取り組んでも
もったいないことになってしまいます。
トイレに関する知識をお店側も知っておいて損はない
お店側は工事業者へ
バリアフリーのトイレを造ってくださいと
お願いしているにもかかわらず、
利用者目線からかけ離れたトイレに
なってしまうケースでしょう。
私も前職のときに、工事業者と揉めて、
工事の見積書そのものを
破棄させていただいたことがありました。
問題だったのは、
誰のために造るトイレなのかが明確になっておらず、
利用者目線について私が指摘しても、
「これが多目的トイレの設計図です」と
工事業者側の一方的な主張だけをされたので、
契約する必要性はないと判断しました。
大事なポイントは、
「どういったお客さまのために
多目的トイレを造るのか?」
「トイレを造ることで今まで来店できなかった
お客さまに喜んでお越しいただくのか?」を
きちんと考えた上で施工されることをおすすめします。
利用者目線を取り入れない
工事業者に造られてしまわないように、
トイレに関する知識においてお店側も、
ある程度把握しておく必要があるでしょう。
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