車椅子生活の体験から学ぶ「情報発信の力」
ある日突然の病気やケガによって車椅子生活になったとしても、健常者だった頃と同じように「楽しんで暮らしたい」という気持ちは誰しも持ち続けています。
しかし現実には、世の中に存在するバリアを目の当たりにすると、どうしても「我慢の生活」が増えてしまい、やがてネガティブな気持ちへと変わっていきます。
かつて楽しんでいた場所や、美味しいと思っていたお店も「行けない」と感じてしまい、気持ちがふさぎ込んでしまうことは少なくありません。
とはいえ、そんな厳しい状況の中で外出そのものをやめてしまうと、さらに世間との距離が広がり、孤立感が強まってしまいます。
だからこそ、店舗や施設を運営している方々が、
有益なバリアフリー情報を発信することは、
多くの人の役に立つ行動なのです。
ところが残念ながら、現状ではまだまだ情報が少なく、むしろ「ほとんど存在しない」と言っても過言ではありません。
だからこそ、情報を発信していくことには大きな意味があるのです。
情報こそが人を救い、社会貢献へとつながります。
今回はその理由について、私の体験を交えてお伝えします。
ブログの流行によりバリアフリー情報が増えていった
私は車椅子生活になって25年以上が経ちましたが、この間に世の中は大きく変化しました。
その背景にある大きな要因のひとつは、インターネットの普及です。
2000年以前は「バリアフリー」という言葉自体が一般的ではなく、ネット検索しても公共施設の情報程度しか見つけられませんでした。
「遊びに行ける場所」を探しても、出てくるのは病院や役所、公民館の多目的トイレの情報ばかりで、全く参考にならなかったのを覚えています。
2000年頃になると、ようやく公共施設以外のスポット情報も少しずつ出てくるようになりましたが、それでもまだ情報量は限られていました。
そんな中、私は初めての宿泊旅行で衝撃的な経験をしました。リハビリ時代の友人を見舞うため伊豆へ向かう途中、横浜のホテルに泊まった時のことです。
「バリアフリールームがある」と聞いていたそのホテル。しかし実際には、バスルームとトイレの入口に10センチ以上の段差があり、さらに入口の幅も狭く、車椅子では利用不可能でした。
フロントに相談しても返答は「我慢してください」。期待していた旅行が一気に台無しになった瞬間でした。
当時は代わりのホテルを探すことも難しく、仕方なく泊まりましたが、入浴は諦め、トイレはペットボトルで代用せざるを得ませんでした。
この辛い出来事こそが、私がバリアフリースポットを調査・発信しようと決意した原点なのです。
多くの人がバリアフリー情報を待っている
情報が不足している状況の中で、車椅子ユーザーが自らの体験をもとに発信することは、大きな意味を持ちます。
そこで私は2005年から12年間、毎日のようにバリアフリースポット情報を更新し続けました。
決して人気ブログではありませんでしたが、それでも読んだ方から旅行相談や感謝の言葉をいただき、少しでも役に立てていることに大きな喜びを感じました。
今なおバリアフリー情報は不足しており、多くの方々がネットで探し続けています。
だからこそ、自店舗や施設が正確で具体的な情報を公開することは、自店の紹介にとどまらず、社会貢献そのものにつながります。
「人に優しいお店だから行ってみたい」――そう思ってもらえるきっかけにもなるでしょう。
ぜひこの機会に、車椅子利用者でも安心して利用できる情報を積極的に発信し、社会全体を変える一歩につなげていただければと願っています。
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