東横インから学ぶバリアフリー情報の見える化
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バリアフリースタイル代表の白倉です。1年半前の12月に日本1周のバリアフリー調査旅行を27日間実施しましたが、残念ながらホテルのバリアフリー化が遅れていたこともあり、私の泊まったホテルの大半は、東横インでの宿泊になりました。(このことは4月1日配信の東洋経済オンライン記事「東横イン「12年前の失態」から遂げた大変身~車いす利用者が格段に使いやすいホテルに~」 に掲載させていただきました。おかげさまでYahooニュースのトップ記事にもなりました。)では今後の東京五輪・パラリンピック開催や超高齢化社会に向けて、具体的に何をしたら車椅子利用者にとって使いやすくなるのかを考えてみたいと思います。
私のバリアフリー調査は情報とは異なったホテルの出来事から始まった
以前とあるバリアフリーの会合に参加した際に、ホテルのバリアフリー対策が進んでいない報告を受けました。そこでの理由は、ホテル側がバリアフリールームを開示して、いざ泊まったら「使えない!」というクレームが怖いというものでした。だからあえて開示をしないとのこと。確かにホテルへせっかく来たのに利用できないというのは、本当に困ってしまうでしょう。私が2005年からバリアフリーの調査を始めるきっかけとなったのも、ある有名ホテルでの誤ったバリアフリールームの開示によるものでした。
その際は「バリアフリールーム」という情報があったので利用したものの、単なる広いだけの部屋でした。バスルームもトイレにも段差があり、しかも入口は車椅子の幅より狭く、どうにもならないものでした。フロントにその旨を伝えると「我慢してください」という返答でした。但し15年近く前の出来事ですので、バリアフリー化されたホテルはほとんどないこともあり、他のホテルを探すこともできない時代でした。
その後、東横インの耐震偽装事件が発生し、ますますバリアフリールームの在り方について考えなければならない状態にありながら、ホテル業界の中で一番力を入れてくださったのは東横インだと思っています。実際に私以外の車椅子利用者からも、「東横インだから安心して利用できる」という声を多くいただきましたので、それならば現在の状況を記事としてまとめたいと思いました。
情報の見える化によって自分自身で利用可能かどうか判断しやすい
そこでなぜ東横インは利用しやすいのに、他のホテルは利用しにくいのかという問題に焦点を当てたいと思います。記事にも書きましたが、「情報の見える化」が一番のポイントです。東横インはチェーン店であり、バリアフリー化された部屋(ハートフルルーム)はAとBの2つのパターンしか設けていません。そのAとBについては、部屋の画像・間取り・共通した備品があるということだけで、車椅子利用者にとってものすごい安心感になります。
なぜ安心感が必要なのかと言いますと、宿泊業界だけに限ったことではなく、飲食業界・スーパー百貨店業界など様々なサービス業に共通した課題になるのは、利用者にとって感じるバリアが人の身体の状態の違いによってそれぞれ変わってくるので、利用者は自分の身体に合わせて、利用できるかどうかを見極めた上で判断したいからです。
例えば、車椅子に乗っている人でも、立位・歩行が多少できる人とそうでない人、手を握ったりすることができる人とそうでない人など生活スタイルが大きく変わってきます。そこで部屋の画像・間取り・備品などがホームページ上で分かれば、「このホテルだったら利用できるにちがいない」「このホテルだったら難しい」と判断できます。それは自分の身体の状態を知っているのは、自分やご家族だからです。
情報は利用者の視点で簡単に探せることがポイント
それが利用者目線に立った「情報の見える化」になります。しかもその情報の掲示方法も工夫が必要になるでしょう。よくあるケースですが、一つ一つのホテルを探してバリアフリー化否かをチェックするのは、利用者にとって面倒な作業ですし、探し当てることができないことも多くあります。それならばホテルのトップページに「バリアフリーについて」のバナーを置いて、「○○ホテルはバリアフリーになっていて、部屋の画像・間取り・備品は○○になっています」となっていれば、利用者は探しやすくなるでしょう。
企業によってはホテルのトップページにバナーを置くのは、あまり好ましくないと思われるかもしれませんが、むしろ超高齢化社会で車椅子利用者が増加している中では、差別化を図ることで十分なビジネスチャンスにつながるのではないかと思います。先ほど述べたクレームの起こる原因を回避していくには、「情報の見える化」をすることで、利用者側の判断を決めるものをつくってみることがおすすめです。
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