「障害者雇用で“できる”を引き出す視点とは?|可能性を広げるリーダーのマインドセット」
バリアフリーアドバイザーの白倉栄一です。
障害者雇用を考える際、どのような職場環境を用意すればよいのかと、つい難しく考えてしまうことがあります。
どうしても「できない」ことに目が向きがちです。
もちろん、物理的に難しい業務が存在するのは事実です。
しかし、視点を変えて方法を工夫すれば、活躍できる場面は大きく広がります。
これは障害者雇用に限らず、リーダーが部下に対して「どう見るか」にも通じます。
チャンスを与える視点があるかどうかで、大きな違いが生まれるでしょう。
「できない」と思っていた相手でも、チャンスを与えることで大きく成長するケースは多々あります。
雇用する側・雇用される側、双方がWIN-WINな関係を築くことが理想です。
今回は、そんな視点の転換について、私の実体験を交えてご紹介します。
イメージだけで判断するのはネガティブな証拠
社内での出来事です。
私が在籍していた会社では、24歳・29歳・34歳・39歳の節目に、将来のキャリアについて面接を受ける機会がありました。
通常は本部の人事担当者が行うのですが、29歳時点では、店のトップであるAさんが担当しました。
- A「君は今後どんな仕事をやりたいのか」
- 私「将来は総務課長を目指しています」
- A「そりゃ困るよ。だって私の部下になるわけだろ~」
- 私「どうしてですか?」
- A「車椅子の人が、いざ何か事件・事故が起きたときに対応できないだろう」
- A「この会社では出世は難しいと思う。やりたいことがあるなら、退職して他の会社に行ったほうがいいと思うよ」
私は非常にショックを受けました。
将来の希望を聞く場で「退職したほうがいい」と言われるとは思っていなかったからです。
その後、社内の元上司に相談したところ「Aさん個人の考えであり、会社の方針ではない」と励ましていただき、安心しました。
Aさんは「車椅子利用者=緊急時に対応できない」というイメージを強く持っていたのでしょう。
しかし私は、その9年後、38歳で人事総務課長に就任しました。
上司はAさんではありませんでしたが、実際に3.11の東日本大震災時には、課長代行として対応にあたりました。
建物内部では、天井から看板が落下、トイレの故障など多くの修繕対応が必要でした。
従業員の安否確認も担当しました。
その他、さまざまな事件・事故の際も、指示や判断を求められる場面がありました。
主任時代の実務経験や、上司・書籍から学んだ知識が、緊急時の判断力につながったと感じています。
つまり、車椅子利用者だから「できない」のではありません。
指示・判断できるスキルさえあれば可能性は広がる
以前、テレビに出演されていた元大臣で車椅子ユーザーの八代英太さんが、こう語っていました。
「有事のとき、北海道の被災地を回って指示を出した。車椅子利用者だからできないということはない。バリアがあるならマンパワーで解決すればいい。重要なのは判断力と指示ができることだ」
多くの人は「車椅子利用者だからできない」と、見た目で判断しがちです。
しかし、それは「車椅子に座っている」という一面にすぎません。
判断力やスキルがあれば、活躍できる場面は数多くあります。
だからこそ、車椅子利用者にも活躍のステージは広がっているのです。
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