企業で活躍できる人材を創る障害者雇用のノウハウとは?

2019.03.18 (月)

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あなたのお店の『バリア解消』請負人 白倉栄一です。

 

私はサラリーマンとして22年間勤務しました。入社して1年半が経ったときにスクーターによるもらい事故に遭い、車椅子生活になったものの、元々在籍していた企業に復帰できたのは本当にうれしかったことです。これは当時在籍していたイオンリテール(旧・ジャスコ)の多くの方々には大変感謝しております。

 

でも正直なことを言えば、いざ復帰しても不安はものすごくありました。それは障害者となった私の居場所はあるのか?将来出世などはできるのか?などいろいろと考えました。

 

勤務をしていた中で感じていたことは、自分が車椅子利用者であることによって、全体の相対評価の中で自分の評価を上げなければ、いつまで経っても出世はしないという厳しい現実でした。そういった点において、どうしたら車椅子利用者であっても企業の中での自分の価値を高められるのかいろいろと戦略を考えました。

 

その結果、多くの上司からチャンスをいただいたこともあり、社内で初めての車椅子の人事総務課長に就任することができました。私だけではなく、障害があっても社内で活躍できる人材になることは十分可能だと思っています。

 

また企業にとっても、人材不足の中で、活躍できる仕組みをつくることは、きっとプラスになるにちがいありません。

 

でも残念ながら、今までの慣例だったり、障害者を知る経験の少なさから、障害者の活躍できる仕組みを考える余裕がないのと、既成概念だけで物事を考えてしまうことで、企業側がバリアを張ってしまうでしょう。

 

そこで私の経験を通して、何か参考になるためのノウハウを掴んでいただければ、きっと企業の皆さま、障害者の皆さまのお役にたつことができると思っております。

 

古い考えからの脱却ができるか

 

人はどんな人でもイメージで決めつけてしまう可能性があります。その人を知って入ればそんな風にはならないのですが、会ったことがなければ余計にバイアス(偏見)がかかってしまいます。

 

最近では女性の管理職登用を高める動きが出ていますが、一昔前では「女性だから管理職にさせられない」といったような偏った見方がありました。以前、私の元上司の女性も、「私(男性)の部下に女性ではダメだ」と言われた経験があると語っていました。

 

現在では、管理職として活躍されている女性の方が徐々に増えてきましたが、古い体質の企業であったり、古参の社員が多い企業では現在でもバイアスがかかっています。一部の古い考えを持っている方がいることで、大きなバリアとなってしまっています。

 

女性の事例と同じように「障害者だから管理職にさせられない」といったようなことを、私は言われたことがあります。どうしても「障害者=○○」といったバイアスがかかってしまい、障害者だからこれしかできないという古い考えを持たれてしまいます。

 

でも自分自身がずっと担当者のままで居続けたくないと思い、とにかく実績を上げることに心がけました。そのおかげで38歳の時に課長職へ就くことができました。働いていた事業所の業績が厳しい状況下であっても、「障害者だからできない」とまわりから言われたくなかったこともあり、めげることなく頑張ることができました。

 

障害者であっても活躍できるステージはたくさんあります。どうしても企業の中には「○○ができないから」というネガティブな方向に人を見る傾向がありますが、むしろ人のできる部分に目を向けることが活躍できる人材を増やせるのではないでしょうか?

意外と「できない」と思われていても「できる」業務はある

 

今回ご紹介するのは私が22年間勤めた企業においての経験です。あくまでも障害のレベルの違いがあるので、参考にならない場合もありますが、モチベーションアップにお役に立てればと思います。

 

車椅子利用者の私は、胸椎5番の損傷をしており、胸から下が麻痺をしているので、腹筋・背筋機能はほとんどありません。但し、手や腕に関しては自由に動かすことができる状態です。総合スーパーの後方スタッフ(売場ではなく事務を中心とした仕事)として働いておりました。

 

業務にはいろいろな仕事がある中で、一般の健常者の方と違って肉体的に「できない」「できる」業務に分かれてしまいます。総合スーパーの仕事は、意外とバリアの多い職種かもしれません。レジ応援・荷物を運ぶ・商品の品出しなどはできない業務になってしまうからです。

 

でも多くの人が「できない」と思われていても、実は「できる」業務も結構あるんです。例えば、年末年始やゴールデンウィークなどに行われているガラポン抽選会の応援は、「できる」仕事です。

 

お客さまからお買い上げレシートを提示してもらい、ご購入いただいた金額をもとに、ガラポンをしていただくだけの仕事です。でも人によっては、車椅子利用者ではガラポン抽選会の応援はできないと決めつけてしまう人がいます。せっかくできる仕事であっても、できない仕事になってしまいます。これが職場における大きな課題です。

 

必要なスキルは、お客さまがいらっしゃったときの明るい笑顔とお客さまにワクワクさせる盛り上げがあれば、車椅子ユーザーの私でも「できる」業務になります。しかもこういった場においては、思いっきり盛り上げることで、障害の有無は全く関係ありません。

 

私自身も以前は、車椅子の姿でお客さまの前に立つのは恥ずかしさもありましたが、そこは度胸と慣れによって変わっていきました。そしていかにパフォーマンスを発揮して「できる」を思いっきりアピールしました。

 

ポイントは「この人ありき」になれることを目指しました。この人が抽選会にいれば盛り上がるとまわりの従業員に思ってもらえれば、その場には欠かせない人になるわけです。だからこそ、自分の努力次第で変えられるのです。

 

でもまわりがそういったイメージを持てないと、バリアが発生します。「できない人には応援させない」となってしまうのです。せっかくできる仕事があるにも関わらず、もったいないものです。だからこそ当事者とのコミュニケーションを通して、考えてほしいと思っています。

 

「できない」業務があると人はマイナスと見てしまいますが、「できる」業務については、人よりもパフォーマンスをさらに上げれば、この人だから任せられるというようにまわりが変わっていくことです。つまり「マイナスをプラスに変える」ことが人から認められて、本人にとって自信となる大きな要素となります。

 

だから職場のリーダーは、安易に判断を下してしまってはダメなんです。もっと従業員の状況をきちんと把握することが必要なのです。そして「できる」ことを一つ一つ増やしていき、働く方々の自信をつけさせてあげることが大事な役割です。

残存機能をフルに活かせてパフォーマンスを発揮する

 

次にパソコン入力です。パソコン入力なんてそんなの当たり前という声があると思いますが、パソコン入力のスピードが速くなることが、どれだけの効率化が図れるかという点においては、ものすごく意味があると思っております。

 

私の場合は、リハビリセンターに入院していた時代に、仕事復帰を想定して、ワープロ機で入力の練習をしていました。おかげさまで仕事復帰したときにものすごく役にたちました。

 

さらに会社に復帰した後も、自宅にてタイピングソフトを使用して訓練をしていたこともあり、その効果によって10分間で1000字以上の入力ができるようになりました。

 

飽きる性格なので、タイピングソフトはゲーム感覚の楽しめるものを使ったのがよかったと思っています。その他には、ほとんどの人が実践していないテンキーのトレーニングもやりました。テンキーにおいても、キーボードのブラインドタッチと同じように、どの指がどのキーを入力するというルールがあり、自宅で何度も正しい入力方法を矯正することができ、かなりスピードアップにつながりました。

 

そういった訓練の結果、パソコン入力のスピードアップにより、業務が素早く片づくことができるようになりました。その後、課長職をやっていた時には、1日に40件の電子メールが送られてきましたが、そんなときにも素早いパソコン入力が活かせて、業務の対応までがスピードアップさせることができて、他の人より早く相手に回答を返信していました。

 

そういったことの積み重ねが相手に対する信頼を生むことにもなりますし、自分をアピールすることにもつながります。さらに私の業務の中では、電話応対にも力を入れました。電話応対は、お客さまへの対応について徹底的に丁寧さを心がけました。どうすればお客さまに対してホスピタリティの出せるかを書籍で読んだりして学んだこともありました。

 

そして課長になってからは、店舗の人事総務課長として、人事・総務・教育・経費管理の責任者だけでなく、お客さまのクレーム対応の責任者もやっていました。「責任者をだせ」と言われれば、私が真っ先に駆けつけなければなりませんでした。

 

お客さまの対応をする部分においても、車椅子利用者だからできないこともなく、大事なのは自分の判断力を磨くことで、お客さまへの対応がいろいろと可能になりました。

 

私にとって、自分の身体は麻痺して動かないところはあっても、残された残存機能をフルに使うことで、自分が頑張れる精一杯のレベルまで追求することができたことです。「できる」内容のパフォーマンスを健常者の方より出していくことで次のステージに行くことができました。

 

私が周りからどう見られていたかどうかは分かりませんが、自分としてはこういった部分でハンディキャップを負っていても、パフォーマンスが発揮できると意識的に考えて行動していました。

頑張っている人にはチャンスを与える

障害者の退職理由の大半は、賃金・条件・職場環境・仕事内容が大きな課題になっています。逆に賃金をアップさせていくためには、パフォーマンスを発揮させていき、企業に貢献していかないと達成できないでしょう。

 

もちろんご紹介したパソコン入力、電話応対、クレーム対応だけが賃金アップにつながるとは思いませんが、効率化を図ろうとする考えが、いろいろな業務においてもつながっていきます。

 

会社のために頑張ろうとする姿があれば、きっと仕事のパフォーマンスに繋がるはずであり、人から認められることになると思っています。

 

もちろん私よりも障害レベルの高い人がいますので、私の事例がそのまま使えるわけではありません。でも人間は残存機能を活かすことで、一般の人にはないパワーが発揮されると思っております。

 

私の知っている視覚障害の方は、歌の世界で活躍しております。耳と声の機能は他の人にはない素晴らしさを持っております。もちろんご本人の努力があって今があるはずです。さらに以前には、腕相撲の日本チャンピオンは車椅子利用者でした。

 

普段から腕を鍛えている車椅子利用者だからこそ、一般の健常者以上の力が発揮されたんだと思います。だからどんなにつらくてもあきらめないことです。あきらめた瞬間に実行には移さなくなってしまうからです。

 

決して健常者と競うために仕事をするわけではありませんが、会社に所属していることで貢献していきたいと思う気持ちは忘れないことです。自分を採用してくれている企業に対して、自分の持てる力で最大のパフォーマンスを発揮する気持ちが、不満の多い賃金・条件・職場環境・仕事内容を変えていけると思います。

 

逆に企業側にとって最も大事なことは、どんな立場の人であっても、頑張っている人にはチャンスを与えることです。チャンスがなくて八方塞がりだとどうしてもやる気が湧いてきません。何をやっても認められないと思えば、当然会社のために頑張ろうとは思わないでしょう。

 

だからこそ職場のリーダーが従業員のやる気をアップさせていく仕組みを作ることです。そうなることできっと企業内での見方も変わり、企業の繁栄にもつながっていけると願っています。

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