その「大丈夫です」が命取りに|車椅子ユーザーの“想定外”を防ぐために必要な視点
その「大丈夫です」がトラブルを招くこともある
「こころのバリアフリー」は、設備だけでなく、“応対の言葉”にも宿る時代です。
車椅子利用者は、日々「安心して利用できる場所」を探しています。
やっと見つけた施設に電話で問い合わせをして——
「車椅子でも利用できますか?」
「大丈夫ですよ!」
そう答えてもらったのに、いざ訪れてみたら、坂が急すぎる、砂利道で進めない——そんな“想定外”に出くわすことがあります。
このようなミスマッチは、決して悪意ではなく、「イメージだけで判断した回答」によって起きることが多いのです。
だからこそ、スタッフ自身がバリアフリーの基本的な知識やユーザー目線を持っているかどうかが、企業の信頼に大きく関わってくるのです。
【1】親切なつもりの「笑顔対応」がミスマッチを生むことも
これは15年以上前、茨城県のある有名スポットでの体験です。
当時はネットでの情報発信も少なく、現地に直接行ってみることにしました。
駐車場には障害者用スペースがあり、ひとまず安心。
でも「施設内は車椅子でも大丈夫か」と確認すると、係員の方は笑顔で「行けますよ」と即答。
ところが、実際には急な坂道を母が必死に押して、やっと入口に到達。
その先は砂利道になっており、車椅子では走行不可能で諦めざるを得ませんでした。
本人に悪気はなかったと思いますが、「段差がなければ大丈夫」という思い込みで判断してしまったのです。
しかし、急坂や砂利道は、車椅子にとって重大なバリアです。
“知らない”というだけで、善意がトラブルになってしまうのです。
【2】ユーザー視点を得るだけで、安心感は変わる
企業としては、悪気のない対応でも、結果としてトラブルになれば信頼低下につながります。
だからこそ、以下のような視点が重要です。
- 実際に車椅子に試乗して、現地を体験してみる
- 利用者の声を聞き、フィードバックを取り入れる
- 現場のスタッフに「個人の感覚で答えない」教育を行う
これらを行うだけで、利用者にとっての安心感はまったく違ってきます。
「バリアフリー=段差がなければOK」ではありません。
実際に“その場所で車椅子が動けるかどうか”が、最大の判断基準なのです。
まとめ:見えないバリアに気づく視点が、信頼を生む
お客様の「大丈夫ですか?」という質問に対して、「本当に大丈夫」と言えるためには、知識と共感力が必要です。
車椅子ユーザーの視点で考えるだけで、今まで見えなかった“バリア”が見えてきます。
そしてそれに気づいた企業・施設が、選ばれ、信頼される時代になっていくでしょう。
「知らなかった」からこそ、今日からひとつ気づきを得る。それが、バリアフリーの第一歩です。
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