バリアフリーは集客の“未開拓資源”|1段の段差が生むロスと可能性
1段の段差が、ひとつのチャンスを失わせる
「こころのバリアフリー」は、接客やサービスの“心の姿勢”が問われる時代になりました。
しかし現場では、ちょっとした段差や配慮の不足で、大きな“チャンスロス”が生まれていることに、まだ気づかれていないケースが多いのです。
車椅子で都内を移動していると、ランチを食べられるお店を探すだけでもひと苦労。
結局、コンビニ弁当で済ませることも珍しくありません。
でも逆に言えば、もし1軒だけでも“安心して入れるお店”があれば、車椅子利用者にとってその街の「希望」になります。
先日訪れた街では、何十軒も見回しましたが、段差のために1軒も入れませんでした。
10cm以上の段差があると、自力での出入りが難しくなるため、諦めるしかないのです。
【1】たった1段の段差が、選ばれない理由になる
実際、街中では私と同じように、飲食店を探している車椅子利用者を見かけることもあります。
ベビーカー利用者も含めれば、その数はさらに増えるでしょう。
しかし、ほんの数段の段差によって、「入れない」「あきらめる」という選択を迫られています。
その場面は、お店の目の前まで行って、「あ、無理だな…」と感じて立ち去るだけ。
実際に声をかける人は少なく、頼れる環境でもない場合がほとんどです。
なぜなら、見知らぬ通行人やスタッフに気軽にお願いできるような空気が整っていないからです。
「断られたらどうしよう」「嫌がられたら申し訳ない」そう感じてしまうのです。
【2】“入れる店”になることで、選ばれる理由ができる
そんな中、たった1軒でもバリアフリー対応ができている店舗があるだけで、風景は一変します。
高齢者は3,500万人。車椅子ユーザーも年々増加しています。
その方たちに選ばれるお店は、家族や付き添いの方を含めた来店グループごと、顧客になる可能性があります。
つまり、1人の来店ではなく、“3人・4人の来店”として波及するのです。
そして「他に行ける店が少ない」からこそ、リピーターになりやすくなるのです。
現在、バリアフリーが整っている店舗は、公共施設や大型商業施設が中心。
個人経営の路面店では、50軒・100軒と探しても、なかなか見つかりません。
だからこそ、段差を解消するだけで“選ばれる店舗”に変わります。
まとめ:段差のない店は、今こそ強みになる
バリアフリーは、「優しさ」だけではなく、「集客力」にもつながります。
ほんの10cmの段差。それをスロープに変えることで、誰かにとって“初めて入れる店”になるのです。
その価値は、これからの高齢化社会において、どんどん高まっていくはずです。
今、段差をなくす一歩を踏み出すことで、「この店があるから安心」と思ってもらえる存在になれるかもしれません。
それが、こころのバリアフリーがもたらす“本当の信頼”なのです。
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