勾配のある駐車スペースは車椅子が転がる危険性も
Contents
バリアフリースタイル代表の白倉です。身障者用駐車スペース自体が坂になっているケースをよく見かけます。施設管理側としては作ってしまったからしょうがないと思うかもしれませんが、思わぬところでトラブルになってしまう可能性もあります。一体どのようなことが起きるのかご説明します。
ちょっとした瞬間で車椅子が後方に…
先日、ある博物館を利用したときにアクシデントが発生しました。クルマから車椅子へ乗り移ろうとドアの脇に車椅子をセッティングしようとした瞬間、車椅子がクルマの後方へ転がっていってしまったのです。とっさに「あああ…」と叫んでしまいました。
幸運だったことには、他のクルマへの衝突がなかったことと、犬と散歩していた方がそばにいらっしゃって、助けて頂きました。本当に感謝しております。でも実は20年以上の車椅子生活をしていて、このような経験は初めてではありません。今までにこのようなアクシデントに数回遭っています。さすがに駐車場に勾配があると、車椅子をセッティングの際に転がっていってしまうものです。
もちろん私自身の不注意によるものですが、ほんのわずかの勾配があるだけでこのようなアクシデントが起こりやすくなります。これは私だけでなく、多くの車椅子利用者が一度は経験していることでしょう。それだけ駐車場の勾配は、危険につながります。多分、施工している人には気づきにくいポイントではないでしょうか?
多分、これくらいならば大丈夫だろうと思うような勾配でも、車椅子利用者にとっては使いにくくなります。よく欠陥住宅の床にビー玉を置いたら転がってしまうような光景を目にしたことはありませんか?あのようなレベルなことが発生してしまいます。
駐車場の問題でも施工状況が悪ければ責任問題になる
クルマから車椅子を降ろしてブレーキをかけますが、その前に一瞬手を放しただけで車椅子は転がっていってしまうものです。もし他の車に衝突したら、間違いなく賠償問題に発展します。駐車場の事故だから施設管理側には関係ないと思うかもしれませんが、もともとの設置状況に問題があったとすれば、事故を起こした車椅子利用者を一方的に非難することはできず、施設管理側の施工における問題点を指摘されるでしょう。
私は総合スーパー勤務時代に次のようなトラブルでクレームを担当したことがあります。その際は、お客さまのシニアカーが一般駐車場にとめていたことでトラブルが発生しました。シニアカーを利用していたお客さまは、邪魔にならないように一般用の駐車場へ置いていましたが、クルマを運転する人からすると、シニアカーの大きさが小さいためにバックミラー・サイドミラーでは見えにくく、あわや衝突しそうだったとのこと。
そしてサービスカウンターの従業員へ「責任者を出せ!」と一喝し、私がその対応をしました。もちろんシニアカーを利用しているお客さまは、丁寧な対応をして下さっていたので問題はありません。しかし事故になる可能性を考えると、避難場所を設置することが得策だと判断し、新たにシニアカー置場をお店の入口付近に設置しました。これでクルマを利用しているお客さまにとっても、シニアカーを利用しているお客さまにとっても安全・安心な形になりました。
その後、クレームを申し出たお客さまとシニアカーを利用されているお客さまには、その旨を説明してご納得を得られました。事故が発生する前にトラブル回避できたことが、何よりも助かりました。こういったちょっとしたことにおいても、施設管理側が責められることは日常茶飯事であり、毎回リスクマネジメントを考えながら仕事をしておりました。
利用されるお客さまのために安全・安心の施工が必要となる
今回の勾配のある身障者用駐車スペースは簡単に改修することができるものではありませんが、安全・安心になるための予算化をして対応することをおすすめします。またこれから新たに駐車場を設置する場合には、勾配のないように気を付けていただくことで、危険回避につながるでしょう。
関連する投稿
- たった2段の段差が大きなバリアとして意味するものとは?
- 「たった1段」の有無だけでバリアフリーの姿勢を意味してしまう
- 店舗のバリアフリーを考える上で気がつきにくい大きなバリアとは?
- 立体駐車場における身障者駐車スペースの有無が難しい
- 誰もが何気なくやっていることがバリアフリーに、それが新しい価値へ
現在の記事: 勾配のある駐車スペースは車椅子が転がる危険性も