その立体駐車場、大丈夫ですか? 車椅子ユーザーの“見えない不便”を解消するポイント
バリアフリーアドバイザーの白倉栄一です。
今回は、商業施設などを管理されている皆さまにぜひ知っていただきたいことをお伝えします。
テーマは「立体駐車場」です。
一見問題なさそうに見える設備でも、車椅子ユーザーにとっては「あるある」の困りごとがたくさん存在します。
こうした“気づきにくいバリア”に目を向けることで、「また行きたい」と思ってもらえる店舗づくりにつながります。
その差こそが、施設の価値を高める鍵となります。
車椅子のマークが見つからない?
立体駐車場で最初につまずきやすいのが、「障害者用駐車スペースはどこ?」という問題です。
呼出ボタンが設置されていれば係員に確認できますが、近年では無料駐車場が増えており、呼出ボタン自体が存在しないこともあります。
そのため、どの階に障害者用スペースがあるのか事前に分からず、戸惑うことになります。
解決策としては、入庫後すぐの目立つ位置に、国際シンボルマーク「車椅子マーク」のピクトグラムを設置し、明確に案内することが重要です。
空いているかどうか、わからない
次に多いのが、「障害者用駐車スペースが空いているかどうか分からない」という課題です。
立体駐車場には各階に「空」や「満」といった表示があるものの、これは一般スペースの情報であり、障害者用の空き状況は分かりません。
さらに近年の構造では、上の階に移動できない仕組みの立体駐車場も増えています。
たとえば2階の障害者用スペースが満車だった場合、3階のスペースが空いていても行けない構造だと、退場して入り直すしかありません。
何度も同じことが続けば、「もうこの施設には行かない」と思われても不思議ではありません。
この問題は設備構造に関わるため、設計段階からバリアフリーの視点を取り入れる必要があります。
呼出対応が聞き取れないというトラブル
もうひとつ見落とされがちなのが、呼出ボタンを押した際の音声トラブルです。
駐車場という構造上、音が反響しやすく、係員の声が非常に聞き取りづらいことがあります。
「どうしましたか?」と尋ねられても、聞こえずに会話が成立しない。
その結果、利用者側も「えっ、なんですか?」となり、係員も「もっとハッキリ話してください」となってしまう。
こうしたやりとりが、時には不快なやりとりに発展してしまうこともあります。
特に障害者用駐車スペースにカラーコーンなどが置かれている場合、動かしてもらえなければ駐車ができません。
こうしたケースに対応するには、日常的な巡回と、呼出対応の改善(ボリューム調整や補助モニター設置など)が求められます。
小さな気づきがサービスレベルを左右する
設備上の問題は、お客さまにとって“施設の印象”に直結します。
もし係員の対応が冷たかったり、駐車スペースに入れなかった経験をすれば、「もうあの商業施設には行かない」と思われてしまうかもしれません。
せっかく店舗スタッフが丁寧な接客をしていても、入り口でつまずかせてしまっては、すべてが台無しになってしまいます。
だからこそ、バリアフリーは「施設全体で取り組むテーマ」です。
立体駐車場という“入口の顔”が整ってこそ、お客さまに選ばれる商業施設になっていくのです。
日々の運用とともに、設計や情報表示の見直しを、今一度考えてみませんか?
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