【車椅子対応の落とし穴】転回スペースが命を守る!店舗・トイレ設計で今すぐ見直すべきポイントとは?
バリアフリーアドバイザーの白倉栄一です。
店舗などで車椅子のバリアフリー対応を検討する際に、ぜひ知っておいていただきたいのが「転回スペース(旋回スペース)」の重要性です。
このスペースが確保されていないと、車椅子に乗ったままバック(後退)で移動する必要が出てきます。
しかし実は、車椅子でのバック移動は意外と危険であることをご存じでしょうか?
車椅子のバック走行には注意が必要
車椅子を操作する際、後ろに何があるかは基本的に見えません。
車のようにバックミラーやサイドミラーがついているわけではないため、「なんとなく大丈夫だろう」と勘でバックするしかないのです。
この「勘」に頼る行為こそが、重大な事故につながるリスクとなります。
たとえば、エレベーターの中で車椅子利用者が降りようと後退したとき、後ろに人が立っていたらどうなるでしょうか?
後輪でその人の足を踏んでしまい、最悪の場合はバランスを崩して車椅子ごと後方に転倒してしまうこともあります。
後頭部を床に強打してしまえば、脳挫傷や頸椎損傷などの重大な障害に至る危険性もあります。
こうしたリスクを回避するために、エレベーター内にはバックミラーのような鏡を設置することが推奨されます。
特に混雑時には、どうしても後退して降りる場面が生まれやすいため、設計段階での配慮が必要です。
トイレ内は車椅子の旋回スペースが必要
次に重要なのが、多機能トイレ・多目的トイレの設計です。
入口の扉幅としては、70~80cm程度の確保が基本ですが、それだけでは不十分です。
利用後に前向きで退出するためには、車椅子をその場でUターン(転回)できるスペースの確保が不可欠です。
もし旋回スペースがなければ、バックで退出するしかなくなり、前述のような危険が発生します。
これはトイレだけでなく、店舗の陳列スペースや売り場の通路においても同様です。
車椅子利用者が進んだ先に行き止まりがあれば、やむを得ずバックすることになってしまいます。
しかし、途中途中に転回スペースが設けられていれば、安全に進路を変えることが可能です。
私の体験から伝えたい「バックの危険性」
私自身、トイレ内でバランスを崩し、後方に転倒して後頭部を流し台に強打し、大量の出血で救急搬送された経験があります。
幸い命に別状はなく、8針縫うだけで済みましたが、もし打ち所が悪ければ、脳や首に重大な後遺症を残していたかもしれません。
こうした実体験からも、転回スペースの重要性を痛感しています。
障害物がある空間では、ちょっとした段差や距離感のミスが命取りになることもあります。
そのためにも、スペースの確保は「安全」だけでなく「安心」にもつながります。
まとめ:車椅子ユーザーにとって本当に使いやすい空間とは?
- 車椅子でのバックは非常に危険。転回スペースを設けて前進移動を基本とする設計が重要
- エレベーターやトイレ、売場の通路などには「安全な方向転換」ができる工夫が必要
- 旋回スペースのない設計は、重大事故やお店の信頼低下につながるリスクもある
- バックの危険性を知ってこそ、本当のバリアフリー設計が見えてくる
メッセージ
「車椅子でも通れる広さがあれば十分」と思っていませんか?
本当に必要なのは「安全に回れる」「安心して動ける」スペースです。
店舗やトイレの設計をされる方、今一度“バックをさせない”という視点で設計を見直してみてください。
その気づきが、誰もが安心して利用できるバリアフリー社会への一歩になります。
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