「たった2cm」が命取りに?段差が生む見えないバリアを考える
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バリアフリーアドバイザーの白倉栄一です。
今後、店舗や施設のバリアフリー化を検討する際、まず重要なポイントとなるのが「見た目」です。
パッと見て「ここは行ける」「ここは無理」と判断されてしまう最大の要因――それが段差です。
一瞬で利用可否を判断されてしまうからこそ、段差に対する理解と対応は欠かせません。
前輪が乗り越えられるのは、わずか2cmまで
車椅子利用者が段差をそのまま走行で超えられるのは、高さ2cm未満が限界です。
2cm以上の段差になると、前輪を持ち上げる(ウィリーのような状態)必要が出てきます。
自力で前輪を上げるには、ハンドリムをしっかり握れる人でないと困難です。
特に頸椎損傷などで手を握れない方にとっては、大きな壁となります。
なぜ2cmが基準になるのか――それは、もし段差を乗り越えられなかった場合、前輪がロックして体が前方に投げ出されてしまう危険性があるためです。
自動車の衝突実験で、シートベルトの有無が大きな差になるのを見たことがある方もいると思います。
それと似たように、車椅子利用者も麻痺などで自分の体を守ることができないため、打撲や骨折につながる恐れがあります。
だからこそ、段差の高さには十分な配慮が必要なのです。
段差が2段以上になると「バリア」そのものに
段差が2段以上になると、状況はさらに深刻です。
1段であれば、介助者1人で何とかなるかもしれませんが、2段以上になると最低でも4人以上のサポートが必要になります。
1人が後ろから押すだけでは上がれず、車椅子ごと持ち上げなければならない状況になります。
これは見た目からしても、明らかなバリアとなってしまうのです。
一時的な対策として、簡易スロープを用意することで対応できるケースもあります。
その場合は、「ご来店時に事前連絡をいただければ、スロープをご用意します」など、ホームページで情報発信しておくことが重要です。
情報がなければ、車椅子利用者は「このお店には行けない」と判断してしまいます。
小さな段差も、当事者にとっては大きな障壁に
一般の方にとっては何気ない小さな段差でも、車椅子利用者にとっては明確なバリアになります。
これからバリアフリーを導入しようと考えている店舗や施設の方には、ぜひ段差の高さやその対処法について再確認していただきたいと思います。
「これくらいなら大丈夫だろう」と思わず、利用者の視点から見直してみることが何より大切です。
もしお困りのことがあれば、お気軽にこのホームページまでご相談ください。
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