店舗のバリアフリー化は集客による売上効果・人に優しい企業の証になる

2019.06.10 (月)

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東京2020オリンピックパラリンピックが近づいてきました。世の中で今まであまり取り上げられてこなかった店舗・施設のバリアフリー化が加速していく時期になりつつあります。

 

でもまだまだ今時点ににおいて、ほとんどの店舗でバリアフリー化には手が付けられていない状態です。

 

そのため店舗のバリアフリー化が一早く進めば、ほとんどのお店にはない差別化が図れる可能性があり、それはただ単に車椅子利用者が使いやすくなるだけでなく、集客による売上効果であったり、人に優しい企業の証にもなるツールです。

 

ではどうやって対応していく形がいいのかを考えてみたいと思います。

バリアフリー化が進めば障害者の間で話題になるはず

飲食店などでは検索サイトがあるように、「口コミ」が早いで有名な業種です。

 

特に障害者のネットワークは強く、行けるところが少ないせいか、行けるところがみつかると一気に押し寄せることもあります。以前、訪れたJR盛岡駅のすぐ近くに、障害者が気軽に入れるスナックがありました。お店の名前は「えびぃず」というお店です。

 

いざ中に入ってみると多目的トイレがあったり、ソファーが車椅子でも使用できるように外せるようになっていました。最近では、コメダ珈琲店でもよく見かけたりします。

 

店内で飲んでいると、一般の健常者だけでなく視覚障害の方や車椅子バスケの選手などが入店されてくるではありませんか?しかも障害のある人と友人が入ってきてものすごく賑わっていました。

 

障害者の中では、ものすごく有名なスポットであり、まさに口コミによるものだと思います。お店の経営者の方もとても気さくな方でしたので、盛岡に行った際にはまた行きたくなるスナックでした。

 

さらには、折込チラシに自店の取り組みを掲載するのもプラスだと思います。私が以前勤めていたお店は、茨城県初のハートビル法(現在の新バリアフリー法)の適用店舗でした。

 

当時の店長は、年に1度(創業祭イベント)だけは販売する商品だけでなく、お店がバリアフリーであるといった内容をPRしたチラシを作っていました。明らかにお店のCSRをきちんと地域のお客さまに知っていただくためのものでした。

 

例えば、自販機は頸椎損傷の方で手が不自由な方でも利用できるように、小銭の投入口は受け皿のような形にしてあるとか、ジュースを選ぶボタンは手の届くところにあるとかをチラシの中で大きく紹介していました。当時の企業のトップは、そのチラシを気に入ってくださったようで、全国の店舗に見せたくて、全国を巡回しながらこういったものを参考にしなさいと伝えていたのを覚えております。

 

実際にそういったチラシはありそうでないんです。だからこそインパクトがあるのかもしれません。その他には飲食店であれば「ぐるなび」だけは車椅子利用可かどうかを掲載しております。車椅子ユーザーは、こういったサイトをチェックしています。行けるところが少ないので、行ける場所を検索します。

 

車椅子ユーザーにとっては、まだまだ気軽にお店へ入って長居のできるようなスポットが少ない状態です。私も行った先で困らないように店舗のホームページを見たり、近隣に多目的トイレがあるか調べたり、お店の入口の画像をGoogleのストリートビューで確かめたりして出かけるのがほとんどです。

 

バリアフリーな店舗があれば選ぶ店が少ない現状ではとても目立つ存在になる

一般の健常者の方々には考えられないと思われるかもしれません。でもそれだけこの世の中にはバリアが多いんです。だからこそバリアフリーな店舗があるだけでそこに車椅子利用者は集中して利用することになります。

 

これからは競争社会です。1人でも多くお客さまにご来店いただきたいのはどこのお店においても課題だと思います。そこで車椅子ユーザーでも使いやすいお店を目指してみるのはいかがですか?きっと今までは来店されなかった方々が続々と訪れるかもしれません。

 

20年間車椅子生活をやってきて、車椅子で来店して確実に安心な施設は、ショッピングモールですね。食事をするためにどこに行くかを考えると、真っ先にショッピングモールを選びます。身障者用駐車スペースがありますし、身障者用トイレ(多目的トイレ)も設置されております。

 

モールのフードコートやレストラン街であればとても安心できるでしょう。たまには、モール以外の路面店のレストランなどに食べに行きたいものですが、路面店のレストランに身障者用駐車スペースがあるところは以前に比べて少しずつ増えているものの、残念ながら身障者用トイレ(多目的トイレ)のあるところはほとんど見かけることがありません。

 

飲食店チェーンでも多目的トイレがほとんどない現実

飲食チェーン店でも、なかなかトイレまでは設置できていない状況です。私の場合は、大体3時間に1度の間隔でトイレに行きます。もしこのようにトイレのない施設を利用する場合は、事前に別の場所でトイレを済ませてから行きますが、長居ができないことがほとんどです。

 

一般の飲食店となると身障者用トイレ(多目的トイレ)まで設置されているところはほとんどありません。しかも場所によっては、駐車場もないところがほとんどです。これが現在の飲食店の現状です。

 

しかし、これからの時代は私のような身体障害者だけでなく、高齢化社会に伴い、3000人の高齢者が徐々に車椅子利用となっていく可能性も出てきます。

 

全人口の4分の1が高齢者となる時代になります。高齢者も元気なうちは、美味しいものを食べに外出していたはずで、身体が不自由になったことで、もうあの店には行けないというような「できない」ことが多くなるのです。

 

それがとても寂しすぎると思いませんか?どんなに歳をとっても、障害者になっても、欲求はあるのに、我慢しなければならない人生を受け容れなければならないんです。車椅子になった私は、それが一般の人より早い段階で受け容れざるを得ませんでした。

 

お店にとっては今こそお客さま獲得のチャンス!

でもお店の入口が広くなったり、トイレが若干広くなったりするだけで利用できるのも事実です。お店はお客さまに多くきてもらいたいと思っているはずで、このような閉鎖的な現実だからこそ、ちょっとの工夫をすることで、他のお店とは違う差別化が十分図れるはずだと思います。

 

もしお金をかけにくいとしても、ちょっとの改装や心のバリアフリーで対応すれば、あの店にはもう行けないと思っていた方が、またあの店で食事ができるように変わるでしょう。そうなったらこんなに嬉しいことはありません。

 

それがお客さま商売のリピーターにつながる理由であり、高齢者・障害者でもまた行きたくなるお店に変わっていくでしょう。

 

最近、東京の日本橋界隈に行くことがありました。昭和通りの地下には都営の駐車場がいくつもあり、多目的トイレ(車椅子利用可)やエレベーターもしくは昇降機がついていて、意外とバリアフリー化になっております。しかし、一旦地上に出てくると、そこは意外とバリアだらけなんです。

 

久々に多目的トイレを探すことにピンチを感じました。どこに行けばあるのだろうか?まさに必死でした。残念ながら、都内においても多目的トイレが少ない状況です。

 

一般用のトイレに車椅子が入れるだけの個室のスペースがあれば、なんとかなるんですが、車椅子の入れる規格のトイレはなかなか見つかりません。

 

20人に1人が車椅子を使う可能性がある世の中

身体障害者は約400万人。その中で私のような肢体不自由者(下半身が麻痺などで動かすことのできない方)は身体障害者の中で54%位と言われております。

 

そうなると約200万人が肢体不自由者であり、車椅子などを利用している障害者となるわけです。高齢で車椅子を利用される方と合わせるとかなりの人数になります。

 

今までにおいて、私たちのような存在はマイノリティーだったかもしれませんが、今後は日本の全人口の中の20人に1人占める割合になる可能性があります。

 

お店で考えると20人のお客さまが今まで来店していたのに、店舗がバリアフリーでないために1人のお客さまが来店しなくなる時代になりつつます。そうなるとお店としては5%の客数減となります。

 

1人1,000円の売上×1日100名のお客さまが来店されていると想定します。1日あたりにすると5,000円の売上減になります。したがって年間365日で計算すると182万円も売上が下がるんです。

 

恐ろしいことだと思いませんか?状況によっては車椅子1人ではなく、ご家族の方、友人などと一緒に来るケースが多いと思われます。その場合は、さらに倍以上の損失になると考えられます。

 

あくまでも単純計算です。車椅子をお使いの方々が、頻繁に外出するかどうかは想定できません。それでも現在の小売店や飲食店は、車椅子の利用者が気軽にお買物や食事ができる環境に至っていないのが現実です。

 

店舗のバリアフリー化が必要になってくる時代へ

大事なのが、車椅子でも利用できるお店づくりです。もちろん店舗のバリアフリー化におけるトイレ・段差・駐車場などの改修工事が必要です。しかも2020年東京オリンピックパラリンピックが近づいていることもあるので、世の中がバリアフリー化に向けてきちんと整備する方向に動いております。

 

気軽に行ける場所の少ない車椅子利用者にとっては、行ける店が増えることを期待しております。残念ながら路面店の小売店や飲食店には、多目的トイレもなければ、広い駐車場もないのが実態です。

 

ショッピングモールのような大きいトイレではなく、ちょっとだけ広いトイレに改装して、車椅子利用者だけでなくベビーカーをお使いのお客さまにも対応できるレベルで大きく変わってきます。そうすれば飲食店などでは席数の削減も最小限にできるにちがいありません。

 

また駐車場においては、身障者用駐車スペースを造ることができなくても、一般の駐車場のスペースを2台分使用可能にするだけで、車椅子への乗り降りが可能になります。お金をかけなくても十分バリアフリー化につながります。ぜひともこれを機にバリアフリー化が進むことを期待しております。

 

車椅子利用者の目線を体験すると今までの景色とはかなり違う

今までは健常者の立場から車椅子利用者のサポートをするという形が、車椅子利用者の目線を体験することで、今後のサポートの仕方が変わってくることだと思います。

 

もちろん今までに大病を患ったり、大けがをしたりして入院をされた経験のある方は、車椅子に乗ったことがあると思いますが、60歳くらいまでの方でそのような経験をしている人は思った以上に少ないと思います。

 

やはりセミナーに参加された50名ほどの方々の中でも、車椅子に乗ったことがある方は10名程度だったと思います。つまりは車椅子を利用している方の目線からの景色は全く分からないということだと思います。

 

セミナーの内容は、とりあえず車椅子に乗ってみて簡単な操作方法を体験していただくことと車椅子でお客さまが利用する場所を体験していただくことでした。

 

実際にお客さまが利用する場所については、今まで気が付かなかった机の高さや通路幅について、「こうした方がいいよね」とかいろいろなアイディアが出てきました。

 

やはり実際に車椅子に乗ってみることによって、頭の中で考えるのではなくて、体験することによってわかることが多いように思えました。2時間という短いセミナーでしたが、セミナーの終了後には受講された方々の車椅子利用者における考え方がものすごく変わってきていらっしゃることでした。

 

今後は、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた社会情勢のニーズと高齢化社会におけるニーズからもっと多くの方々が、このようなセミナーに参加されることを通して、車椅子目線とはどういうものなのか?を体験されることを願っております。

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