「それ、本当にバリアフリー?」知らずに作られる“こころのバリア”に気づく視点とは
多様なお客さまが訪れる時代。
これまでバリアフリーに触れてこなかった方も、今こそ「最初の一歩」を踏み出す時かもしれません。
ここでは「バリアフリーって何から考えればいい?」という方に向けて、ビジネス現場で使える具体的な気づきをお届けします。
施設の“当たり前”が、お客さまには“バリア”になることがある
バリアフリーを考えるとき、施設側が「当然」と思っているルールや仕組みが、実は利用者にとっては大きな障壁になっていることがあります。
その視点のズレこそが、こころのバリアフリーの課題といえるかもしれません。
「1名では購入できません」──誰のための車椅子席?
あるスポーツ観戦イベントでの出来事です。
車椅子席は設けられていましたが、チケットは先着制。当日早朝から並んでいた車椅子利用者の方が、1名での入場を断られてしまったのです。
係員の説明は「付き添いの方がいないと販売できない」というものでした。
ですが、そのようなルールは事前に一切告知されていませんでした。
つまり施設側は、「車椅子利用者は必ず付き添いがいるもの」という先入観に基づいた運用をしていたのです。
しかし現実には、車椅子1人で行動する方も多く存在します。
このような運用は、知らずにお客さまを排除してしまう“心のバリア”につながってしまいます。
社内ルールが「見えないバリア」になっていませんか?
商業施設などでは、「夜間はエレベーターを止める」「特定の時間帯は該当階へ行けない」などの内部運用ルールが存在することがあります。
その結果、車椅子利用者が目的の場所に行けなくなるケースが発生してしまうのです。
そして施設側は「ルールですから…」と当然のように答えてしまう。
中には「〇時までにご利用いただかないと困るんです」と説教めいた対応をする例もあります。
しかし、そのルールはHPや館内掲示にも記載されておらず、利用者には共有されていないのがほとんど。
つまり“ルール違反”ではなく、知らされていなかっただけ。
それでも利用者側が注意される理不尽さは、大きなストレスになってしまいます。
自分だったらどう感じるか──こころのバリアをなくすために
施設運営では、「先着順販売」や「入口の開閉時間」などでトラブル防止を目的としたルールを設けることがあります。
もちろんその判断は必要です。
ただしそのルールが特定の人にだけ不便を強いるものになっていないかどうか。
“自分がその立場だったらどう感じるか?”という視点が欠けてしまうと、知らず知らずのうちに利用のハードルを上げてしまいます。
最もシンプルで有効なのは、当事者の声を聞くことです。
車椅子利用者と一緒に施設を確認するだけでも、気づきの量が大きく変わります。
ぜひ“見えないバリア”を取り除くために、柔軟なルール運用と、気持ちのこもった接遇を心がけてみてください。
それこそが、超高齢社会における選ばれる施設の条件になるのです。
まずは「知らなかった」から「知ってよかった」へ。
今、バリアフリー対応を始めることが、未来のお客さまとの信頼づくりにつながります。
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