ドラマ『パーフェクトワールド』がバリアフリーを知るきっかけにつながる理由

2019.05.15 (水)

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東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで500日を切った。ようやく開催チケットの予約が始まったが、国が掲げている共生社会においては、まだ多くの課題を残している。

 

実際に世の中の多くの方々は、障害者雇用の課題や公共交通機関・商業施設などのバリアフリーの課題がどういったものなのか、具体的に分からないことばかりではないだろうか。

 

今後は、国が進めている共生社会への取り組みが、インクルーシブ教育システムとして小・中学校でも行われていくだろう。でも子供たちは学ぶ機会があっても、すでに大人になっている私たちにとっては、「障害者」「バリアフリー」といったテーマを学ぶ機会はほとんどない。

 

身近に車椅子利用者がいれば、どんなことに悩んでいて、どのようにしたら暮らしやすくなるのかを知っているかもしれない。ましてや車椅子利用者に知り合いがいなければ、全くわからないことばかりではないだろう。

 

といっても実際に家族や親友以外では、車椅子利用者の本音を知ることは難しいかもしれない。なぜなら身体のようなデリケートな部分ほど、当事者本人であっても、人前ではなかなか言いだしにくい。

 

私も23年前から車椅子生活者をしているが、サラリーマン時代には、職場の上司や主要なチームメンバーには、自分の身体の細かい状態を伝えていても、それ以外の人にはなかなか言い出しにくかった経験がある。

車椅子・バリアフリーを知るきっかけになるドラマ

来年には、東京2020オリンピック・パラリンピックの開催や超高齢化社会になっている現在、今だから「車椅子」「バリアフリー」というキーワードを知っておくと何かと役に立つはずにちがいない。

 

そのことを学ぶ上でもの凄く分かりやすく表現されているのが、現在フジテレビ系列で放送中のドラマ『パーフェクトワールド』である。

 

ドラマの主人公の車椅子利用者である(鮎川樹)役は、人気俳優の松坂桃李さん。その鮎川樹に恋する相手(川奈つぐみ)役には山本美月さんが演じている。

 

私も今までいろいろな車椅子利用者に関わるドラマを観てきたものの、先ほど述べたような車椅子利用者の本音などを表現するドラマは、あまり観たことがない。

 

ところが今回の『パーフェクトワールド』は、過去のドラマ以上に、車椅子利用者の日常生活の悩みごとをきちんと表現している作品である。私のような車椅子利用者から見れば、「車椅子利用者あるある」ばかりだ。

 

★ちなみにその動画はこちらです。【スマホではこちら】

 

https://www.youtube.com/watch?time_continue=29&v=F-oP7_Pe-l4

 

今回のドラマを通して、障害者雇用やバリアフリーの知識を学ぶことができるので、もし興味があるのであれば、ぜひこの機会におすすめしたい。

「車椅子利用者あるある」が細かく描かれている

今回、主人公(鮎川樹)を演じている松坂桃李さんは、大学生の時に事故に遭って脊髄損傷になり、下半身不随となってしまったことで、車椅子生活をしている設定だ。私も主人公同様に23年前の交通事故によって、脊髄損傷になり車椅子生活を続けているので、自分の体験と照らしても、本当にうなずけることが多い。

 

一般の人からすると車椅子利用者は、歩くことができないという点ばかりに目を向けてしまいがちだが、実際はそればかりではない。脊髄を損傷したことによる、いろいろな合併症に悩んでいる人が多い。

 

このドラマでは、そういった合併症についても、細かく表現されている。そのため一般の人にも、本当の意味で車椅子に乗っている脊髄を損傷している人の悩みを知ることができるだろう。

 

脊髄を損傷していると、体調管理が安定しないことが多いために、体調が崩れることで失禁、そして尿路感染症による高熱が発生したりすることがある。このような症状は、人によって症状の違いはあるものの、睡眠不足であったり、ちょっとしたストレスがかかることで起きてしまいやすい。

 

今回の主人公も上記のようなデリケートな症状を演じていて、その際に起こってしまうメンタル部分のつらさも細かく表現されている。歩けないことばかりが辛いわけではなく、そういった合併症のようなものが、意外と脊髄を損傷していると辛くなるものだ。

 

特に尿路感染症により高熱が発生してしまうと、数日間は会社を休まなければならない。病院で診察を受けて、処方箋で抗生物質を投与してもらい、自宅で細菌が除去するまで静養しなければならないだろう。

 

さらに昨日(5月14日)のドラマの内容で、感覚が麻痺している部分であったり、切断等により手や足がない部分が、突発的な激痛(幻肢痛)を伴うこともある。私もこの激痛には頻繁に悩まれていて、鎮痛薬を飲んでもほとんど効かない。人前で痛くなっても、なるべく顔にださないようにしている。

 

こういった部分も含めて、脊髄を損傷していると、日ごろの体調管理は十分注意しなければならない。但し、本人の注意だけでは、どうしても対応することができない。そういったことを会社側も知っておいたほうが、お互いの仕事のためにもいいはずである。

褥瘡は車椅子利用者の誰もが注意している

そして主人公が靴を履かないで、車椅子に座っていたために、足の指が血だらけになってしたシーンがあった。これもよくあることで、麻痺しているために本人が気づかないことがある。しかも一般の人と違って、血行の巡りもあまり良くないので、治るまでに時間がかかってしまう。

 

さらに長時間にわたって、車椅子に座りっぱなしになっているので、褥瘡(じょくそう)、つまり床ずれを発生させてしまうケースがある。今回、褥瘡になってしまった主人公は、病院のベッドでうつぶせになり、仕事をするシーンがあった。

 

一旦、褥瘡を発症してしまうと、長期間にわたり静養しなければならない。いかに皮膚に負担をかけないためにうつぶせを行うが、この間は仕事に行くことができなくなってしまう。場合によっては、何ヶ月にわたり休職しなければならないこともあるから大変である。

 

それでも会社として、褥瘡防止のための措置を考えることはできるだろう。それは車椅子利用者のために簡易的なベッドなどを設置しておくと、休憩時間にお尻を静養することが可能になる。さすがに1日8時間以上にわたって、車椅子に座ったままでいると、身体にかなりの負担がかかるからだ。

 

私が勤めていた事業所においても、会議室の端っこにカーテンで区切って、ベッドを設置してくれていた。ベッドで休むことで、休憩後の仕事にもいい気分転換になり、能率が上がるように感じていたので、決してコスト増だけのことではない。

 

そういった工夫を会社として行うことができると、人に優しい会社になるだろうし、まわりの従業員にも「車椅子」「バリアフリー」といったテーマが浸透しやすくなるにちがいない。

障害者雇用やバリアフリーにつながるテーマ

今回のドラマは、こういった「車椅子利用者あるある」がたくさん表現されている。今までのドラマは大抵歩くことができないつらさだけを表現するものだったが、実際には日常生活における悩みのほうが大きな課題になっている。

 

日常的な悩みまでを表現されているので、車椅子利用者を理解しやすいだろう。その他にも、車椅子利用者が、日常使用しているクルマの手動運転も披露されているので、このような光景を初めて見た人も多いにちがいない。

 

ちなみに足のアクセル・ブレーキは、手動のスティックと連動していて、スティックを引くとアクセル、押すとブレーキとなっている単純構造だ。

 

しかも一般のクルマに手動運転装置をつけるだけなので、大きな改造をするわけではない。そして、必要となれば一般の人が通常のように足で踏んで、運転することも可能である。

 

来年には東京2020オリンピック・パラリンピックなども行われる中で、国も共生社会のためにいろいろな提案をしている。そんな中でこの『パーフェクトワールド』は、誰もが車椅子利用者を知るきっかけには適している番組と言えるだろう。

 

ドラマを通して、今後の障害者雇用、バリアフリーなどがもっと身近になっていくことで、多くの人の興味や関心が湧いていくことだろう。しかも人気俳優の松坂桃李さんが演じているので、親近感がより沸くことは確かである。

 

ぜひ多くの方々に視聴していただいて、街中に多くいる車椅子利用者の姿を見て、「車椅子」「バリアフリー」に興味をもつ社会になっていくことを願いたい。

 

(参考)【引用】文部科学省における「共生社会」とは、これまで必ずしも十分に社会参加できるような環境になかった障害者等が、積極的に参加・貢献していくことができる社会である。それは、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様な在り方を相互に認め合える全員参加型の社会である。このような社会を目指すことは、我が国において最も積極的に取り組むべき重要な課題である。

 

★『パーフェクトワールド』ホームページは→こちら

 

★今までの内容を見逃してしまった方は(カンテレドーガ)→こちら

 

★文部科学省ホームページ(共生社会)→こちら

 

★『パーフェクトワールド』のモチーフになった阿部一雄さんのエピソード(おすすめ)→こちら

 

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