その“優しさ”、伝わっていますか?|高齢者・障害者対応で気をつけたい“言葉遣い”の落とし穴
バリアフリーアドバイザーの白倉栄一です。
先日、あるクリニックを訪れた際に、接遇に関して気になることがありました。
障害者や高齢者への接し方の中に、“良かれと思った対応”が、実は相手を不快にさせてしまうことがあるのです。
今回は、現場で実際に感じた「言葉遣い」の重要性についてお話ししたいと思います。
【結論】優しさのつもりが“子ども扱い”に見えることがある
どんなに親切な気持ちからの言葉でも、相手の立場に立たずに発されたものは、受け手にとって「見下されている」と感じさせてしまう可能性があります。
特に高齢者や障害者への“子ども言葉”や、“全部やってあげる”ような行動には注意が必要です。
【理由】自分で判断したい人の“尊厳”を奪ってしまうから
私自身、長年車椅子で生活してきましたが、医療機関などでこうした対応を受けることがたびたびありました。
たとえば、受付で何かを伝えようとした際に、私ではなく同行者である母に向かって話しかけられる。
あるいは、自分で判断して動けるにもかかわらず、すべてを代わりに決められてしまう。
そこに共通しているのは、「この人には判断能力がないだろう」「こっちでやってあげた方が早い」という、決めつけにも似た意識です。
結果として、相手の“自尊心”を傷つけてしまいます。
【具体例】丁寧さと“尊重”は両立できる
もちろん、声が聞こえにくそうであれば、大きめの声で話す。
ゆっくり話せば理解しやすくなる人には、話すスピードを落とす。
そうした工夫はとても有効です。
しかし、「おこちゃま言葉」や、「わたしが全部やりますね〜」というような上から目線のトーンでは、相手の“気持ち”に寄り添えていません。
本当に求められているのは、「どうされますか?」「お手伝いが必要なことはありますか?」と、“選ぶ権利”を相手に委ねる姿勢です。
その方が、信頼関係を築くことにつながります。
【提案】正しい努力は、必ず信頼を生む
医療や接客の現場で働く皆さまの「助けたい」「支えたい」という気持ちは、決して否定すべきものではありません。
ただし、その思いを“伝わる形”にするには、もう一歩、相手の目線に立つトレーニングが必要です。
「自分がされて嬉しいか?」という視点を常に持つことが、相手にとっての“本当の優しさ”になります。
【まとめ】
- 優しいつもりが“子ども扱い”になっていないか注意する
- 高齢者や障害者の“自尊心”を尊重した言葉遣いが大切
- 「判断は相手に委ねる」ことで、信頼関係を築く
- “お手伝い”は求められた時に、さりげなく行う
【メッセージ】
あなたの“その優しさ”、相手にどう伝わっていますか?
ほんの少しの心がけで、接客の質は大きく変わります。
ぜひ、相手の気持ちを大切にする接し方を、現場で実践してみてください。
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