企業において障害者雇用をポジティブな見方へ変えるためのポイント
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障害者雇用については、現在は障害者雇用促進法という法律の中で、従業員数の多い企業においては障害者の雇用を義務付けられております。
民間企業においての法定雇用率は、2018年4月に改訂されて、2.0%→2.2%以上になりました。
つまり45.5人以上の従業員のいる企業においては、1人の障害者を雇用しなければなりません。
残念ながら売り手市場という人材不足が続く中で、障害者の雇用が進んでいない現状があります。
その理由としては、厚生労働省の「障害者雇用実態調査」(5年に1度)を見ると、「社内に適当な仕事がない」「職場の安全性の配慮が適切にできない」「採用時に適正能力を十分に把握していない」などが企業からの回答となっております。
そういった中で、企業が障害者雇用がしやすくなる環境になって、障害者にとっても働きやすくなる環境になることで、お互いがWIN・WINの関係になるでしょう。
それが障害者雇用のバリアを解消していくことにつながると思っています。
職場におけるコミュニケーションの必要性
その根底になっているのは、障害者とふれあう機会が少ない点です。
私が車椅子利用者なので、セミナーなどに参加した方々に聞いたところ、障害者と話したことがないという声が多いことが分かりました。
企業の中に障害者がいたとしても、部署が違ったりすれば、交流の機会がないという声もありました。
そのため、ご家族や友人に障害者がいるような環境でないと、話す機会が全くないと言っても過言ではありません。
小学校からの学校生活の中で障害者はあまりいなかったと思います。
私が子供の頃は、障害者は養護学校に通っていたこともあり、一般の学生と交流する機会がありませんでした。
そういった意味では、誰もが場そのものがありませんでした。
でも企業の中で、何らかの交流する場を設けることで、お互いのコミュニケーションを構築していくことは可能です。
お互いのコミュニケーションがうまくいったら、障害者を雇用するのをためらっていた企業にとっても、十分活かせるようになるでしょう。
採用面接で必要なポイントは活躍できる人材に育つかどうか
車椅子ユーザーの友人に聞くと、企業が障害者を選考する際に、どうしても手段ばかりにクローズアップしてしまう傾向があるようです。
1人で通勤することが可能かどうか・社内でジャンパーに着替えをすることができるか・公共交通機関を利用した通勤が可能かどうかなど。
もちろん、選考する際には確認しなければならない大事なポイントかもしれません。
でも障害におけるネガティブな部分だけの質問になってしまうと、「できない」ことばかりに注目してしまいがちです。
障害者本人が今まで何かに取り組んできたことや、これから頑張っていきたいと考えていることなどポジティブなことを、ぜひクローズアップしてほしいものです。
企業が障害者雇用をしなければならないから採用するという雰囲気ではなく、障害者でもがんばっていけば活躍できる機会があることを伝える雰囲気こそが必要です。
そのためには、企業側としてノウハウをつけておく必要があります。もしそれがないのであれば、せっかく雇っても全く意味がありません。
よくある事例が、障害者を採用しても、「何もやらないで結構です」とか、「ただ居ていただければ結構です」とか何のために採用したのか分からないケースがあります。
雇用しているので法定雇用率の未達によるペナルティの対象ではありませんが、これでは企業側も何のために賃金を支払うのか、採用された障害者も何のために働くのか全く分からない状態です。
せっかく採用しているのであれば、障害者でも働き甲斐のある職場環境を創っていくほうが、お互いに幸せになるでしょう。
もし企業側のあなたが、突然の病気やケガに遭ってしまって、障害者になったとします。
そのときにあなたは同様に「何もしなくても結構です」と言われたらどうでしょう。
自分がその立場になったら、間違いなく辛いはずです。
私は24歳のときに健常者から障害者になったので、その気持ちがよく分かります。
だからこそ上から目線ではなく、相手の立場にたってみることで気づくことがあると思っています。
残存機能を活かせば「できない」が「できる」に変わる
最近では障害者の雇用が積極的に行われてきておりますが、残念ながら退職される方も後を絶たないと聞いております。
一般の人においても、学校を卒業後、社会人になってこれからいざ頑張ろうとワクワクした思いでスタートをしたら、企業にいざ入社してみると現実とは違った世界に幻滅してしまうことがよくあります。
障害者においても同様なケースが起きております。
なぜならば障害者の退職理由の大きな部分を占めているのが、「賃金や労働条件に不満」「職場の雰囲気や人間関係」「仕事の内容が合わない」「会社の配慮が不十分」といったのはトップランクです。
障害者枠で入社したから賃金はそのままという理由をよく聞きます。
企業としては活躍できるステージが作られておらず、いつまで経っても昇給はなし、役職も上がらないなどの不満をよく聞きます。
一般の健常者と同じように、障害者であっても頑張ればチャンスがあると思って入社しても、「あなたは障害者だから○○」というだけでチャンスが与えられないのはものすごく残念なことです。
そういったケースを避けるために、障害者枠に応募するのではなく、あえて一般枠に応募する障がい者の方も増えております。
せっかく入社したのだから活躍したい気持ちの表れです。
一般枠なら頑張ればチャンスを与えてくれるはずだという切なる願いです。
でも残念ながらその希望にこたえてくれないという声もあります。
何とかして企業に貢献して自分の能力を発揮したいと思っていても、企業としてその気持ちに応えようとしていないのは、とてももったいないものです。
最近ではその実態をさらに避けるために、自分自身の能力に応じて判断してくれる士業を目指す障害者も増えています。
弁護士・公認会計士・税理士・社会保険労務士・デザイナーなど。
そうなれば自分の能力を発揮すれば、それに見合った報酬を手に入れることができると考える人が多くなっています。
障害者の立場にたって考えることが職場の環境を変える
障害者を雇うということは、何に困っているかを本人からきちんと聞く必要があります。
実際に何も聞かないでいると、障害者本人がとても使いづらいと思っているケースがあっても我慢していることが多くあります。
そのためには、相手の立場にたった職場環境の構築が必要となります。
なぜなら、障害者が勤務するということは、トイレだけでなく、駐車場・通路・机の高さ・エレベーター・引き出しなどのハード面やその方が持っている病気や体調などを理解してほしいのです。
働きやすさを解消しないと、効率の悪い仕事場になったり、ストレスの感じる仕事場になる場合も出てきます。
逆を言えば、一つ一つの問題を解消すれば、一般の健常者にとっても働きやすい職場となり、効率のアップが可能になります。
チームも盛り上がることで、従業員満足につながります。私自身は昇格した後に、とにかく効率のいい職場環境を自分自身で作りました。
引き出し一つとってもすぐとれる場所に変えました。なるべく移動しないでできるようにすることで大幅に時間のムダを削減しました。
私が車椅子ユーザーとして復帰したときに大変だったのは、机の高さでした。
一般的な事務用机のサイズは、車椅子に乗ったままではどうしても膝が当たる高さとなっておりました。
当時、関東本部の人事課長が私のためにパソコン用机を用意してくれました。本当にありがたかったです。
この配慮がなければ、毎日の仕事でパソコンで入力する際に、辛い体勢のままやらざるを得ませんでした。そうなれば仕事の効率が低下するばかりか、パソコンを入力する姿勢にも無理が生じます。
人事課長と話をする機会があって、「困っていることはありませんか?」と質問をして下さった事で実現しました。
私はこのパソコン机を導入していただき、パソコン入力がとてもスムーズになりました。
机は5万円前後したと思いますが、私の人件費におけるパフォーマンスを考えた場合、その5万円は仕事の効率ですぐに取り戻すことができました。
ここで重要なのは、障害者の採用において「健常者には分からない障害者の不具合をヒアリングすること」です。
そのためには、日ごろのコミュニケーションをとっておく必要があるということです。
よくある話では、障害者の採用をしてもその後は全く会話がないという状況も起きているようです。
その部分に耐えられなくて、障害者の退職理由の1つに挙がっていることも確かです。
直接のコミュニケーションだけでなく、会社では毎月実施している安全衛生委員会などで従業員の職場環境について取り上げてみるのもいいのではないでしょうか。
コスト面で改善するのは難しい部分もあると思いますが、まずは声を聞くところから職場環境を改善できると思います。
能力を持った方々が埋もれたままではありませんか?
せっかく採用をしたのであれば、企業の中で活躍できる人材に育てることが、企業にとっては大きな貢献につながります。
職場における環境においては、どうしてもマイナス部分に目がいく傾向が多いです。
そうすることによって「あの人は仕事ができない」と決めつけてしまいがちです。特に障害者の場合は、そう思われてしまうケースが多々あります。
本人のやる気と企業側の働きやすい職場環境の構築や教育プログラムがしっかり整備されれば、障害者であっても賃金や待遇面のアップだけでなく、役職の任命などが可能になると思っております。
そのために重要なことは、とにかく人と人とのコミュニケーションです。
相手に確認しなければ分からないものはたくさんあります。
働いている人は意思を持っています。
上司は部下の意思を聞いてあげることで、チームビルディングを作っていくための情報づくりになると思います。
健常者であろうと障害者であろうと人件費がかかるものです。
せっかく雇っているならば企業に貢献してもらうためのステージづくりは欠かさないものです。
そのためには本人の意思を確認し続けることで、能力発揮の糸口がみつかるのではないでしょうか。
残念なことにまだまだ多くの職場は、働いている障害者と対話をしていないケースが多いと言われております。
気軽に障害者の方の声を聴いてあげることで本音を知り、職場環境におけるコミュニケーションをとることで、障害者の方にも活躍できるステージが創れると思っています。
そして所属しているチームもきっと盛り上がっていくと思っております。
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