“居場所”があるだけで続けられる──障害者雇用で見逃されがちな本質とは?
「障害者雇用って難しそう…でも、何から始めれば?」
そんな想いを抱く企業の方へ、実体験をもとに“こころのバリアフリー”に触れるきっかけをお届けします。
本シリーズでは、バリアフリーをこれから学びたい方に向けて、超高齢化社会を支える職場のヒントをやさしくご紹介しています。
離職率の課題は「環境」から始まっている
障害者雇用における高い離職率が、最近のニュースでも注目されています。
その背景には、職場に“居場所”を感じられない構造的な課題があります。
せっかく採用されても、歓迎ムードのない職場や、応援してくれる人がいない環境では、モチベーションを保つことすら難しいでしょう。
「採用したら終わり」ではなく、「働きやすい環境づくり」こそがスタートラインです。
復帰できたのは、歓迎してくれた“空気”があったから
私自身も1996年に交通事故で車いす生活となり、約1年3ヶ月のリハビリを経て、1997年に職場復帰をしました。
実家のある茨城県のバリアフリー対応店舗に配属が決まりましたが、知り合いもおらず、赤字店舗という逆風の中での復帰でした。
それでも迎えてくれた上司や仲間たちの温かさが、私の心を支えてくれたのです。
もしもそこで「なぜあなたがここに?」と冷ややかに迎えられていたら、復帰後も長く続かなかったかもしれません。
職場の“空気”が、働き続けられるかどうかを左右するのだと、身をもって実感しました。
「相談できる人がいるだけ」で、人は強くなれる
以前の職場には、新入社員に対して“お世話係”という制度がありました。
相談相手として昼食を共にしたり、日常の悩みを共有できる存在がいることで、「ひとりじゃない」と感じられる仕組みです。
今では廃止されてしまいましたが、こうした取り組みこそ、新しく入社した方が職場に馴染む第一歩になるのではないでしょうか。
障害者雇用においても、このような“味方がそばにいる”仕組みがあれば、心細さを軽減でき、離職の抑止につながります。
「何もしなくていい」と言われるほど、つらいものはない
とある企業では、障害者に対して「1日何もしなくていいから、席にいてくれればいい」と言う職場があると聞きます。
法定雇用率対策としての採用──それでは本人の尊厳もモチベーションも守れません。
人は、役割があるからこそ、自信とやりがいを感じられるのです。
「できること」を一緒に探し、「頑張ればできること」に挑戦できる環境を整える。
それが企業と本人、両方にとって幸せな選択につながります。
“人を雇う”のではなく、“人と働く”意識が、職場を変える。
あなたの会社が、心のバリアフリーを実現する一歩になるかもしれません。
関連する投稿
- 障害者雇用には面倒見のいい上司の存在が欠かせない
- 障害者雇用においても活躍できるステージはある
- 車椅子ユーザーの採用の前にオフィスのバリアフリーのチェック
- 障害者雇用は採用活動よりも採用後どうするかがポイント
- 障害者雇用において職場環境次第で活躍度が変わる理由⭐︎
現在の記事: “居場所”があるだけで続けられる──障害者雇用で見逃されがちな本質とは?