店舗のバリアフリー化が交通機関のバリアフリーの先にあると相乗効果をもたらす

2019.04.01 (月)

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あなたのお店の『バリア解消』請負人 白倉栄一です。バリアフリー法の施行によって車椅子利用者の社会は大きく変わってきています。特に鉄道や飛行機などはこの10年くらいで大きく便利になりました。そしてショッピングモールのような大型商業施設にもバリアフリー化が当たり前のようになってきました。ところがそれ以外のバリアフリー化はまだ発展途上であり、都内でも50軒・100軒の路面店の店舗をチェックしても、多目的トイレはおろか、段差さえ解消されていないのがほとんどです。もちろん導入コストの問題もありますが、バリアフリー化には価値がないと考えてしまうのはちょっと違っています。

 

上記のような公共交通機関が便利になり、超高齢化社会になり車椅子利用者が大幅に増えていることから、車椅子利用者は行ける場所を探しているのが実情です。であるならば、需要(車椅子利用者)は高まったのに、供給(バリアフリー化された店舗)がほとんど存在しないのが現在の日本と言えるでしょう。そういった中で、まずは公共交通機関がバリアフリー化になっている現状を知っていただきたいと思っております。そしてここまで進んだバリアフリー化なら、自店にもやる意義があると感じて頂けるとありがたいです。

 

私は車椅子利用者となって20年以上が経ち、世の中もかなり変化しています。なかなか気軽に旅行できなかった時代から、今ではいろいろな機器が登場して便利になってきました。現在の状況はなんとか「行ける」という状況であり、「楽しむ」といった質の部分に関してはまだまだ課題が残っております。

 

2020年東京オリンピック・パラリンピックが迫る中で、あらゆる面においてのバリアフリー化は必要となってきます。さらに高齢化社会が進んでいく中においても、車椅子を利用しなければ外出できない人も増えてきます。そうした背景の中で、車椅子利用者が旅行をするということ中心に交通機関におけるバリアフリーを考えてみたいと思います。

電車の場合におけるバリアフリー

私の場合の移動手段は車が多いのですが、車で行くにはどうしても遠いと思われる場合や時間的にも急ぐ場合には、電車を利用することもあります。さすがに電車の場合は渋滞というアクシデントがないので、到着時刻を読みやすくなります。

 

駅の改札に行き、駅員さんが丁寧に応対してくださいます。質問される内容は「どこの駅まで行くのか?」「乗換が必要かどうか?」「乗り降りする際にお手伝いが必要かどうか?」です。その希望をもとに、駅員さんが行先の駅へ電話連絡をとります。

 

ここからは駅員さん同士のやりとりになるので、どんな話をしているか分かりませんが、多分、「何時何分発の電車で何時何分到着になること」「何号車の何番目のドアに乗っていること」をきちんと伝えていると思います。先方の駅との打ち合わせがあるので、乗りたい電車の次の電車になることがほとんどです。

 

連絡が終わったら、駅員さんがホームまで同伴してくださいます。最近は、駅の改札からホームまでエレベーターがある駅がほとんどなので、大変便利になっています。時間が多少ある場合は、トイレに行きたいかどうかを伝えておくといいでしょう。

 

先ほど何号車の何番目のドアと書きましたが、大概の車両は車椅子利用者の乗る場所はほとんど決まっています。駅のホームに車椅子マークが掲載されています。しかし、車椅子利用者が多い場合は、その該当車両でないケースもたまにあります。

 

ホームでは車両との隙間があるので、取り外し可能なスロープを用意してくださいます。そのスロープを通って乗り込めば、あとは電車に乗っているだけです。お手伝いが必要ないと申し出た方については、スロープを用意しないと思います。

 

私もスロープなしで乗ることは可能だと思いますが、あの隙間がめちゃくちゃ怖いんです。ホームと車両の隙間に落ちた人がいると過去に聞いたことがあるので、あえて無理をしないでスロープの設置をお願いすることにしています。

 

電車の中では、車椅子マークのあるスペースがある場合とそうでない場合がありますが、混んでいたりしたら車椅子マークのあるスペースまでたどりつけないこともあります。そういった場合は、手すりのそばに行き、手すりだけは握っているようにしています。

 

意外と電車内は揺れるため、ちょっとしたときにバランスを崩す可能性もあるので注意が必要です。すでに行先を告げているため、途中下車はできません。到着した駅で駅員さんが取り外し可能なスロープをもって待っていてくれます。

 

そして電車を降りて改札口へ向かいます。乗換がある場合は、また次の目的地の駅へ電話連絡する形になると思います。そのため、乗換案内アプリに表示されている時間通りにはいきません。むしろ少し余裕のもった時間が必要になります。

飛行機におけるバリアフリー

その前に大きな注意事項があります。それは駐車場の確保です。空港の駐車場台数はものすごくあるように思えますが、状況によっては当日「満車」となっているケースをよく見かけます。私も「満車」によって予約していた飛行機を変更せざるを得なかったことがあるんです。

 

羽田空港の場合をご紹介しますと、羽田空港の駐車場は事前予約ができます。事前予約は一般タイプと個室タイプがあります。個室タイプは完全にシャッターで仕切られるのでいたずらされる心配はありませんが、価格は少し割高です。でも当日とめられないことを避けるためにも事前予約はおすすめです。

 

他の空港に関しては詳しくありませんが、ちなみに茨城空港の場合は予約も一切ありません。当日空いているところに駐車するのみです。駐車料金もかかりません。さらに安心なのは空港の出発便・到着便が終了したら、空港そのものを閉鎖するため、駐車場も立ち入り禁止になります。

 

当日の空港対応については、空港にはお体が不自由な人のためのカウンターが設置されております。出発時間の40分前には到着が必要となります。格安航空会社は60分前には到着が必要となる場合があります。

 

大手航空会社の場合は、空港用の車椅子に乗り換えるタイミングはいつにするか決めさせてくれます。私は搭乗する瞬間までは、自分の車椅子でいる方がリラックスできるので、その旨をお伝えします。但し格安航空会社の場合は、人手が少ないこともあり、チェックイン時に空港用の車椅子に乗り換える必要があります。

 

大手航空会社はボーディングブリッジによる搭乗となるために、出発時間の15分前まで自分の時間が作れます。トイレに行ったり、お土産を買ったり・・・。しかし格安航空会社の場合は、ボーディングブリッジの搭乗ができない場合もあるため、自分の時間に制限が出てきます。

 

ボーディングブリッジとは、ターミナルビルから旅客機に乗客や乗員を乗降させるための設備です。ボーディングブリッジがない場合は、階段用のタラップになりますが、車椅子利用者の場合は昇降機が多いです。しかし、手配できない場合はおんぶになると言われたこともあります。

 

搭乗開始の時刻になったら、まずはお体が不自由な方から案内されます。次にグレードの高いクラスのチケットを持っている方、そして一般のエコノミーの方の順番で搭乗します。降りる場合は、グレードの高いクラス→エコノミー→お体が不自由な方の順になるので、到着時刻より15分位遅くなります。

 

さらに飛行機の到着時刻はよく遅れるので、人と空港で待ち合わせる場合は、到着時刻から30分後あたりが私の経験からすると望ましいです。

車の運転におけるバリアフリー

現在ではすでに足を使わないで運転できる手動運転装置があります。この手動運転装置がなかったら、公共交通機関やタクシーで移動するような生活になっていて、気軽におでかけすることが出来ない生活になっていたでしょう。

 

実際の使い方は、アクセルペダルとブレーキペダルを連動させて、1本のスティックとなります。スティックを押したらブレーキが作動し、引いたらアクセルが作動します。練習中は慣れないことからブレーキとアクセルを、ついつい頭で考えて、逆に操作してしまう方もいましたが、何度も練習を重ねていくと自然に身体が覚えていくので、間違えることはなくなります。

 

私はマイカーに固定式の手動運転装置を取り付けておりますが、最近では持ち運びができる取り外し可能な手動運転装置も所有しております。持ち運び式は、マイカーで行くには距離が長すぎる場合に重宝します。

 

日本1周を旅行した私なら、全国各地にもマイカーで行くんじゃない?って言われがちですが、さすがに茨城に住んでいる私はせいぜい北は仙台・南は名古屋くらいまでならマイカーで行きますが、京都・大阪となると体力面を考慮して新幹線や飛行機で行きたいものです。

 

現状を踏まえると、新幹線の駅や空港まではスムーズに行けますが、そこからの交通手段がなかなか難しいのが実情です。以前は、手動運転装置付きのレンタカーを所有している企業にお願いして、空港や駅までレンタカーを持ってきていただいて旅行をしていました。

 

持ち運び可能な手動運転装置があれば、一般のレンタカーに取り付けるだけで済みます。行動範囲はおのずと広がるわけです。重量も約900グラムと持ち運べる重さです。固定式と持ち運び式を両方使い分けることで、行動範囲が広がるでしょう。車椅子生活になってもアイテムを使いこなせば、行動範囲は確保できるわけです。大事なのは、常にいろいろな情報を手に入れておくことなんです。

レンタカーにおけるバリアフリー

レンタカー事情です。車椅子利用者にとって旅行をする際に気になることがいろいろとありますよね。①宿泊施設をどうするか?②旅行の観光地に身障者用トイレがあるのか?⓷移動手段はどうするか?毎回、苦労するテーマです。

 

その中でも大きなテーマとなるのが、3番目に挙げた「移動手段」です。私は毎回、自分の車で移動をしております。たださすがに遠い距離まで自分の車で行くのは自信がありません。茨城に住んでいる私の場合、南は名古屋・北は仙台くらいまでなら過去にも行った経験があるので大丈夫です。

 

もちろん、人によっては九州・北海道まで自分の車で旅行をする方もいるはずですが、さすがに距離も時間もかかります。一番の理由は、身体への負担が気になります。長時間の運転では床ずれも心配です。そうなると、旅行範囲が限られてきてしまうんです。

 

ではどうするか?旅行先でレンタカーを借りるのはどうだろうか?旅行先におけるレンタカーについてです。私は今まで全国各地の旅行に行きましたが、残念ながら空港の大手レンタカー会社に手動運転装置付のレンタカーはほとんどありません。

 

以前は佐賀空港に該当の装置付きのレンタカーがあったのですが、今ではその取り組みはされていません。(佐賀県が行っていた取り組みです)ものすごく便利でしたので、とても残念でなりません。

 

あくまでも事前予約が必要でしたが、空港に設置してあるレンタカー会社に行くだけで、終了時にはレンタカー会社に返すだけですから、一般のレンタカー利用とそう変わりはありません。

 

もちろん、現時点で手動運転装置付のレンタカーを貸してくれる企業はいくつかありますが、レンタカーの専門企業ではないので、「代車」として最寄りの空港まで届けてくれるといったものです。

 

その場合、レンタカー会社~空港までの回送料金がかかります。(片道5000円~1万円×往復)※レンタカー費用は別途かかります。またレンタカーを借りている時間は最終便まで借りるといったことはできません。

 

ある程度、18時頃までには返さなければならないですし、返却する際に空港で待ち合わせなどをしなければならないのはちょっと面倒ですね。それでも、世の中に手動運転装置付のレンタカーがほとんどない状態の中では、代車とはいえ貸していただけるのは本当にありがたいことです。

 

今まで沖縄・北海道・熊本・神戸などの旅行が出来たのも貸していただける企業があったからこそだと思っております。私は平日の旅行なので意外とスムーズにお借りすることができますが、休日・祝日・GWの旅行ならば借りることができないのかもしれません。

 

そういった意味では今までラッキーだったのかもしれません。もしお借りすることが出来なければ、その旅行は中止せざるを得なくなります。私は中止を考えるのであれば、自分で持ち運べる手動運転装置を購入した方がいいと判断して対応しています。

 

もちろん望むことは、世の中の大手レンタカー会社が各空港に手動運転装置付のレンタカーを配備していただくことです。大掛かりなものではなく、取り外し可能な手動運転装置を営業所に、まずは1基を配備していただくことから始めてはいかがなものでしょうか?そこから未来が変わっていくと思っております。

フェリーにおけるバリアフリー

今回の日本1周のバリアフリー調査をした際に2回利用したのが長距離フェリーです。今までもフェリーに乗船したことはありましたが、東京湾や伊勢湾を渡るだけの1時間余りの利用でした。今回は長距離フェリーを体験しましたので、その内容をお伝えします。

 

まず長距離フェリーを利用した区間は、仙台港(宮城県)~苫小牧港(北海道)です。今回の旅行をするにあたり、北海道を外すわけにはいきませんでした。そのためフェリーを利用して、まず北海道に上陸することを考えました。

 

この区間で利用したのは、太平洋フェリーです。日本で一番優雅なフェリーで有名です。だからこそぜひとも乗船したかったのです。あらかじめバリアフリーの個室(2人部屋)を予約しておきました。仙台港に到着してフェリーターミナルに車検証を持参して手続きをします。

 

ちなみに出航時間の1時間前には手続きが必要になります。一般の人と同じ乗船ではないので、指示をされてフェリーターミナルの後ろ側に車を移動して車内で待機しました。その後、フェリーの係員に誘導を受けて乗船します。

 

車椅子利用者であることを伝えると所定の駐車位置に案内してくれます。目の前には船内に行くエレベーターがあります。エレベーターに乗って船内に行き、スタッフの方にチケットを見せます。そうすると個室への案内となります。

 

バリアフリーの個室はホテルのような優雅なイメージです。風呂はなくシャワーになっていますが、乗り移りできる座席があります。そしてトイレも設置されております。豪華なフェリーだけあって、音楽のコンサートなどの催しものもありました。

 

豪華客船のようなイメージではないですが、バンド演奏などはとても楽しめました。食事もバイキングレストランになっておりますが、スタッフの方が料理をとってくれて、とても助かりました。丁寧なスタッフの方々でした。

 

気になるのは船内の揺れでしたが、私が乗船したときは全くと言っていいほど揺れることはありませんでした。リラックスして乗船することができたのは本当によかったです。スタッフの方に聞いたところ、日によっては揺れることもあるそうです。その時にはスタッフの方でも酔い止め薬を飲んでおくとおっしゃっておりました。

 

19時~翌日11時30分までの長い旅になりましたが、あっという間の時間でした。気がついたらすでに北海道へ上陸していたのにはびっくりです。そして自分の車で移動できるのは、慣れている車なので嬉しいですね。

 

ほとんど場合、北海道へ行くのは飛行機の旅になると思いますが、日数に多少の余裕があればフェリーでの旅もおすすめです。一番気になるのが船酔いですが、私はどちらにおいても船酔いはしませんでした。酔い止め薬も飲みませんでした。

 

もし気になる方は太平洋ではないフェリーから利用してみるのもいいと思います。瀬戸内海を渡るフェリーであればあまり揺れることがないようです。大阪~北九州間のフェリーなどでお試ししてみるのもいかがでしょうか?普段では味わえない旅の喜びを感じることができるはずです。

 

以上が交通機関のバリアフリー状況でした。この交通機関の延長線上に店舗・施設のバリアフリー化があると、相乗効果を生み出すでしょう。しかもそれを望んでいる車椅子利用者がほとんどです。だからこそ今そのニーズに応えることで、他のお店では対応できないことが、あなたのお店であれば利用できる喜びに変わり、集客による売上効果につながるだけでなく、人に優しい企業の証までついてくることでしょう。

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