「“使えるバリアフリー”は当事者の声から生まれる──設計ミスを防ぎ、真のユニバーサルを実現する視点」

2025.06.07 (土)

バリアフリーアドバイザーの白倉栄一です。

 

車椅子利用者として長年過ごしていると、よく見かけるのが「使いにくいバリアフリー」です。

 

使いにくいトイレ、傾斜のきついスロープ、乗り降りスペースのない障害者用駐車スペースなど。

 

※残念な事例(ごく一部ですが…)

 



 

 

せっかくお金を出して設置するなら、「あってよかった」と思われる設備であってほしいものです。

 

では、どういった点に注意する必要があるのかをお伝えします。

 

当事者の声が反映されてこそ“本当のバリアフリー”になる

 

 

たとえばビジネス番組で、商品開発において当事者の声をヒアリングしているシーンを見かけたことはないでしょうか。

 

女子高生に人気の商品を作るなら、女子高生に直接意見を聞くのが一番です。

 

それと同様に、バリアフリー設備を設計するなら、利用者である障害者の声を聞くことが不可欠です。

 

しかし現実には、車椅子利用者から見て「これ、本当に使えるの?」と驚くような設備が少なくありません。

 

私自身が無料で配布している「バリアフリートイレ設置ノウハウ」の小冊子を、建築業の友人に渡したところ、「手すりの高さや広さの寸法が載っていて助かる」と言われたことがあります。

 

つまり、建築のプロであっても、バリアフリーの現場感覚を知らないことが多いのです。

 

特に「造ったのに使えない」バリアフリーには、ある共通点があります。

 

それは「実際に使用する人の立場で検証されていない」ことです。

 

勾配が急なスロープ、手すりが遠すぎるトイレ、スペースが足りない駐車場…。どれも“あったらいい”けれど“使いにくい”という残念な結果になっています。

 

改修工事には費用も時間もかかります。

 

だからこそ、最初の設計段階から、当事者の声を取り入れることが何より大切なのです。

 

「誰のためのバリアフリーか?」を忘れない設計を

 

 

大切なのは、「この設備を誰が使うのか?」を常に意識することです。

 

「たぶんこれで大丈夫」と感覚だけで設計するのではなく、検証し、確認し、使える設計を目指すことが求められます。

 

たとえば、私のような手動車椅子ユーザーであれば、比較的コンパクトなスペースでも使えることがあります。

 

しかし、電動車椅子や介助者の同伴が必要なケースでは、広い旋回スペースやユニバーサルベッドなどが求められます。

 

すべてを一気に整備するのは難しいかもしれません。

 

しかし「対象となるお客さまにとって、本当に使いやすいか?」という視点で判断すれば、限られた予算でも、より良い選択ができるはずです。

 

そして、**当事者の声を取り入れることこそが、最大のリスク回避になります。**

 

その結果、安心して使ってもらえるバリアフリーが実現し、「ここなら行ける」と思っていただける場所になります。

 

それがやがて“選ばれるお店・施設”としてのブランドとなり、集客にもつながっていくのです。

 

今こそ、「誰のためのバリアフリーか」を見つめ直すときかもしれません。

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