店舗における車椅子のバリアフリーを考えた通路幅の基準は?
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バリアフリースタイル代表の白倉です。商業施設や飲食店などで車椅子が通行するための通路幅はどれくらい確保したほうがいいのか気になるところです。一般の人にとっては、「車椅子の幅だけ確保すればいいのでは?」と考えていらっしゃると思いますが、果たしてそれでいいのか考えてみたいと思います。
ギリギリの確保では車椅子を傷つけてしまう
以前、ある観光スポットにてロープウェイに乗る際、係員の方が「60㎝なので車椅子でもギリギリ乗れますよ」とおっしゃったこともあり、せっかく来たので乗ってみました。ところが60㎝ではやはり狭く、係員の方が無理やりゴンドラへ押し込めたこともあって、車椅子のハンドリム(大車輪の外側に固定された小型の輪)がかなり傷ついたことがありました。
もちろん私が太っていたから、横幅があったのでは?という意見もあるかと思いますが、一般的に車椅子の幅を考えると、人によってタイヤとハンドリムの間隔や座幅の違いがあるものの、自走用の車椅子は約60㎝、病院やショッピングモールなどにある車椅子は約65㎝であると思います。
そうなると係員の方がどうにかして車椅子利用者にも喜んでもらいたいと思っても、「横幅60㎝=車椅子OK」はちょっと厳しいサイズになります。もちろん既存のゴンドラを変えるわけにはいきませんが、ハンドリムが傷つくような状況は相応しいものではありません。
国土交通省HPにある基準を参考にするといい
そこで車椅子の幅を考えたときにどれくらいの幅がいいのかですが、国土交通省のHPに基準値が書かれています。
【寸法・意味】(参照:国土交通省HP)
●80㎝:車いすで通過できる寸法
●90㎝:車いすで通過しやすい寸法・通路を車いすで通行できる寸法
●120㎝:通路を車いすで通行しやすい寸法・人が横向きになれば車いす使用者とすれ違える寸法・杖使用者が円滑に通過できる寸法
●140㎝:車いす使用者が転回(180 度方向転換)できる寸法・杖使用者が円滑に上下できる階段幅の寸法
●150㎝:車いす使用者が回転できる寸法・人と車いす使用者がすれ違える寸法
●180㎝:車いす使用者が回転しやすい寸法・車いす使用者同士が行き違いやすい寸法
実際に車椅子に乗っている立場からすると、上記の基準は多少余裕のある程度ではないかと思いますが、衝突事故などを発生させないためには上記のような基準が相応しいと考えます。車椅子の横幅65㎝と考えたときに、65㎝ギリギリでは通過するときに、ハンドリムが壁や障害物に擦ったり、当たったりするかもしれません。
さらにギリギリの設定にしてしまう弊害は、別の席に座っている人に「すみません、後ろを通りますのでよろしいでしょうか?」と声をかけなければならないでしょう。楽しんで会話していたり、食事をしている中で、中断させてしまうことになるでしょう。もちろん限られたスペースであればやむを得ませんが、そうでなければ車椅子利用のお客さま・動かなければならないお客さまにとってストレスになってしまう場合もあります。
車椅子利用者に一度確かめてもらうのがおすすめ
大事なことは、なるべく気軽に、スムーズに、そして快適に感じるような空間設計を考えることではないでしょうか? そのためには上記の基準を考えた上で、お店の方が車椅子に試乗して幅を確かめたり、車椅子利用者に一度確かめてもらって大丈夫なのかどうか判断してもらってもいいでしょう。机上論ではなく実際に確かめることをおすすめします。
☆車椅子の寸法(参考:JAMA 一般社団法人日本自動車工業会HPより)→こちら
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