障害者雇用における車椅子での働き方改革のポイントは?
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あなたのお店の『バリア解消』請負人 白倉栄一です。私はサラリーマン時代に交通事故に遭い、障害者になりました。元々在籍していた企業に復帰できたものの、障害者となる前の状況と、後の状況では、自分をとりまく仕事の環境は大きく変わりました。自分の身体の状態から「できない」「できてもパフォーマンスを発揮できない」ような仕事が出てくるからです。そのような状況において、どうやったら社内で自分の居場所を確保するか、昇進するためにはどうするかなど、いろいろと悩みました。なかなかうまくいかず転職しようと思ったこともありました。
今思うと、ポジティブに、そして戦略的に自分を高めていくにはどうしたらいいかと考えたことが、車椅子ユーザーでも昇進できた結果だったように思います。今回はその頃を振りかえって、障害者雇用というテーマをもとに企業において活躍できるステージを創るためにはどうしたらいいかを考えてみたいと思います。障害者雇用において取り組んでいらっしゃる企業や雇用されている方々のご参考になれば幸いです。
車椅子生活になって先が見えなくなったこともあった
私は1995年にイオンリテール(当時ジャスコ)に入社したときは、農産売場担当でした。将来は世界の果物を日本に輸入するバイヤーになりたいという希望をもっていましたが、1年後の9月にスクーターに乗っていてもらい事故を受けて車椅子生活になりました。それから20年以上のサラリーマン生活は、車椅子ユーザーとして仕事をしておりました。
今思えば、車椅子利用者だと担当者時代のほうが「作業」が多くなりました。この作業というものが、意外と車椅子ユーザーにとっては、できるものとできないものが明確に多くなりがちです。小売業で言えば、レジ応援や荷物を運ぶようなことは、どうしても物理的に苦手な作業となってしまいます。そのため苦手な作業を少なくして、車椅子で仕事をしてもハンディキャップにならない仕事を多くしていくと仕事のやりがいであったり、能力を発揮することが可能になります。
そこで車椅子ユーザーにとって厳しくなりがちなのが、社内は「相対評価」で決まることです。自分にとって物理的にできない仕事があっても、相対評価の中ではその仕事が除外されるわけではなく、他の人と比較をされてしまいます。「あの人は車椅子利用者だから…」という評価をつけられてしまいかねません。そうなるとなかなか昇格しようとしてもできなくなってしまいます。その点を考慮してくれる方であればいいのですが、そうでないことが多いものです。そのため私も社内の評価において、ものすごく低くなったこともありました。自分の中では悔しいの一言でした。
しかも29歳のときにある面談で言われたことは、「あなたがもし昇格したくても、車椅子ユーザーのあなたが部下にになっては困る。いざ何かがあれば対応できないでしょ。もしあなたが将来出世をしたいのであれば、うちの会社では難しいから、転職したほうがいいよ。あなたのためだよ」と。そのときには「もう一生昇格できないのでは?」と絶望的になりました。ちょうど入社して5年ほどが経過した頃でした。でも昔の上司などに相談したりして、「それは会社の考えではない。あくまでもその人の個人的な意見だから気にしないこと。あなたが頑張れば道はある!」と言ってくれたことで、そのまま継続して仕事を続けることにしました。
相対評価であっても評価を上げていくポイント
でも実際に、こうした社内の相対評価の中で、自分にチャンスがあるかをいろいろと考えました。私の戦略では、残存機能を活かして私ができる仕事については、他の人より徹底的にパフォーマンスを上回るようにすることを考えました。当時、総務に所属していたこともあり、総務や人事のプロフェッショナルになるためにはどうするかを模索しました。その代わりにできない仕事(レジ・荷物運び)については、できないとまわりに思わせてしまうと、明らかに大きなイメージダウンにつながるので、参加する姿勢だけを強く見せることにしました。そのためレジ研修などは、積極的に参加するように考えました。
その戦略がうまくいき、社内の相対評価であっても、自分の存在感を大きく示すことができたために、担当者から主任、課長代行、課長へとステップアップさせることができました。また自分をきちんと評価してくれる上司との出会いによって、昇格することができたことも確かです。本当に感謝しております。また不思議なことに、担当者からステップアップすることで、「作業」が少なくなる点があり、以前に比べて仕事をしやすい環境になりました。もちろん責任の度合いは増えていくものの、車椅子であるがゆえの作業によるハンディキャップは、少なくなったような気がしました。
私は課長までしか経験したことがありませんが、部長・役員などがもし車椅子利用者であっても、作業自体は少ないために物理的にできない、苦手とする仕事ではないように思います。いわば一般の健常者と同じ土俵で仕事をすることができるのかもしれません。そう考えれば、優秀な車椅子ユーザーが担当者で止まっているとしたらもったいないことかもしれません。もしかしたらもっとパフォーマンスを発揮できるのに、社内のルールであったり、教育システムによって、バリアが発生しているのかもしれません。ぜひとも車椅子ユーザーでも活躍できる場を創ることで、企業の繁栄にもつながっていくことを願っています。
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