利用しやすいバリアフリーはお客さま対応の良さによって決まる
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バリアフリースタイル代表の白倉です。私は1年半前に念願だった日本1周のバリアフリー調査を実施しました。その中で気になったことは、「うちはバリアフリーについては力をいれています」と宣言しているところほど、残念ながら使いづらい施設でした。それは、バリアフリーの設備は整っているというPRに過ぎなかったのです。バリアフリー化にとって大事なことは、設備(ハード面)だけではなく、接客応対面(ソフト面)の充実も考えなければならない点です。
バリアフリー化の設備面だけでは満足してもらえない
利用者目線で考えますと、設備面のバリアフリー化が整っていることは安心感につながります。今回、私が利用したホテルの出来事をお話しします。そのホテルは、バリアフリーの設備がものすごく整っていることをホームページで紹介していました。そのため車椅子利用者の私にとって、PRされていたバリアフリー化の施設だからこそ、一度利用してみたいという思いが強くなりました。そういった意味では、はじめから期待値が高くなってしまったのかもしれません。
車椅子の後ろにリュックをかけて、膝にはボストンバッグを置いて、ホテルのフロントで手続きをしました。その後、部屋に案内する人がフロントに来てくれました。通常であれば「ボストンバッグをお持ちしましょうか?」と声をかけると思いますが、無言のままで荷物を持っていただけるわけでもなく、部屋まで一緒に行くものの、部屋の中での操作説明などはなく、「何かあったらフロントへ連絡ください」と。そのため、この人は何のために部屋まで案内してくれたのかわかりませんでした。
次に食事です。夕食はコースになっていてホテルの中のレストランで食べることになりました。レストランのシェフは有名な方のようで、料理はかなり美味しいものでした。しかし接客スタッフの対応は、コース料理であるにもかかわらず料理の説明は一切なく、料理を食べ終わる前に、次々に料理を運んできてしまいます。しかもほとんど無言で料理を置いていきます。この対応はスタッフ1人だけでなくすべてのスタッフが同じでした。そしてチェックアウトの際にも淡々と対応されていて、当日は外は猛吹雪状態の中、何もサポートのないままホテルの屋外駐車場へ向かったことを覚えています。
お客さま満足にむけての教育こそが大事なポイント
このケースにおけるポイントは、各々の接客応対レベルの問題ではなく、接客応対の教育を受けていないことによるものではないでしょうか? 建物のバリアフリーがきちんと整っているにも関わらず、ソフト面における部分ができていないのは、本当にもったいないと思う事例でした。こういった施設はよく見かけますが、大事なポイントはお客さまに対するホスピタリティです。ホスピタリティとは「思いやり」「心のおもてなし」という意味であり、サービス業には欠かせないものです。だからこそ、お客さま満足のための接客応対の教育が必要になると思います。
むしろバリアフリーの設備が整っていることを考えれば、接客応対の技術が備わることで、他の施設を寄せ付けないほどの圧倒的なバリアフリー施設になる可能性があります。お客さまに対していかに満足していただけるかは、ハード面だけでなくソフト面の充実がカギを握ります。超高齢化社会においては、車椅子利用者の増大を考えれば、きっとリピーター化されてニーズが高まるにちがいありません。
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