車椅子でも利用できるバリアフリーはリピーター化にもつながる
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バリアフリースタイル代表の白倉です。店舗において車椅子利用者がお店に来るようになったら、どれだけメリットがあるのか?が経営者の皆さまには気になる点ではないでしょうか?「たった1人の車椅子利用者が来たくらいで何が変わるのか?」「むしろバリアフリー化にすることのコストだけが上積みされていき、費用対効果が合わないのではないか?」と危惧しているのではないでしょうか?
車椅子利用者がマイノリティーではなくなってくる時代へ
現時点で高齢者と呼ばれる方々は、約3500万人いらっしゃいます。日本の人口の4分の1を占めている中で、一部の方々が車椅子を利用していることでしょう。確実な人数は把握できませんが、年齢層のバランスは、徐々に高齢化シフトされてきているだけに、今後は車椅子人口は増える可能性が考えられるでしょう。
さらに身体障害者は約400万人。その中で私のような肢体不自由者(*)は身体障害者の中で54%位と言われております。そうなると約200万人が肢体不自由者(*)であり、義足などを使用している人もいますが、車椅子を使用している障害者の数の割合は多い状況です。さきほどの高齢で車椅子を利用される方と合わせるとある程度の人数になるはずです。
今までにおいて、私たちのような存在はマイノリティーだったかもしれませんが、今後は日本の全人口の中の20人に1人占める割合になる可能性もあります。お店で考えると20人のお客さまが今まで来店していたのに、店舗がバリアフリーでないために1人のお客さまが来店しなくなる時代になりつつます。
車椅子のお客さまにプラスして家族・同僚・地域住民など利用者が増える
単純計算をするとお店としては5%の客数減となります。1人1,000円の売上×1日100名のお客さまが来店されていると想定します。1日あたりにすると5,000円の売上減になります。したがって年間365日で計算すると182万円も売上が下がるんです。百万単位での損失になると考えると大きくなりますが、実際にはさらに増大の損失になるでしょう。なぜなら車椅子利用者は1人ではなく、ご家族の方、友人などと一緒に来るケースが多いものです。その場合は、さらに倍以上の損失になると考えられます。
ある都道府県の旅館組合の方と以前お話をしたときに、各旅館の女将が集まる女将さん会というものを定期的に実施して、客数増を図るためにどうしていったらいいかなどをお互いに意見を出し合う場があるとのこと。その中で、当初はバリアフリー化については後ろ向きだったらしく、コストをかけてもたまにいらっしゃる車椅子利用のお客さまを獲得しても、割に合わないという意見が出ていたようです。もちろん、宿泊施設においては一般の飲食店・スーパーなどと違って、部屋・風呂・トイレなど多くのバリア解消に取り組まなければなりませんので、コストの増大を想像すれば、そう思うのもやむを得ないでしょう。
ところがこのところ、車椅子利用のお客さまにはご家族だけでなく、地域住民の集まりであったり、同僚であったり、多人数が利用するケースが多くなっていることに気がついたとのこと。しかも1人の車椅子のお客さまに対して、10名以上の一般のお客さまがいらっしゃるので、収益は倍どころではなく、何倍にも膨れ上がるそうです。この効果に気がついたことで、女将さん会においても、バリアフリーへの取り組みについて前向きに議論されるようになってきているとおっしゃっていました。
成功すればリピーター化にもつながるだけにチャンスとなる
これは飲食店でも同様のことが起きています。車椅子利用のお客さま1人に対して、会社などの集まりの場所が「車椅子で行けるお店」を選んでいます。現時点、バリアフリーなお店がないだけに、一度利用したらリピーター化に繋がっている状況です。そうなると費用対効果を考えるならば、明らかに効果の方があると言えるでしょう。しかも改修工事においては、行政の補助金申請などもできる時代です。これを見逃すことはもったないと思います。
ある区の行政担当者からは、ほとんどの事業者様があまり活用されないので、状況によっては、翌年度の予算には組まれない可能性もあるとおっしゃっていました。のんびりしていたら予算も終わり、東京オリンピックパラリンピックも終わり、超高齢化社会にも対応できないとなってしまう恐れがあります。ほとんどの企業が取り組まれていないからこそ、逆にチャンスだととらえてみてはいかがでしょうか?
※肢体不自由者【東京大学バリアフリー支援室HP参照】
肢体不自由とは、四肢(上肢・下肢)、体幹(腹筋、背筋、胸筋、足の筋肉を含む胴体の部分)が病気や怪我で損なわれ、長期にわたり歩行や筆記などの日常生活動作に困難がともなう状態をいいます。原因としては、先天性のもの、事故による手足の損傷、あるいは脳や脊髄等の神経に損傷を受けてなるもの、関節等の変形からなるものなどがあります。
一口に肢体不自由といっても、障害の部位や程度によってかなり個人差があります。たとえば、右足に障害がある場合、左半身に障害がある場合、あるいは両足、全身の運動動作が不自由という場合もあります。また障害の程度も、日常生活動作にさほど困難を感じさせない程度から、立ったり歩いたりなどの動作に支障があるため杖や車いすや義足などを必要とする程度、日常動作の多くに介助を要する程度などさまざまです。
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