店舗や施設における今後のバリアフリーの設備課題について
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あなたの会社の『バリア解消』請負人 白倉栄一です。
現在の日本は超高齢化社会に向かっており、高齢者が3500万人以上います。
平均寿命は女性87歳・男性81歳ですが、健康寿命となると平均寿命の10歳以上も手前になると言われています。
団塊の世代も現在は元気であっても、あと数年経てば、健康寿命にも到達する年齢になります。
10年前に比べても車椅子利用者は街中で見かけるようになりましたが、さらに増加傾向になるのは間違いないでしょう。
そのため店舗や施設のバリアフリー化は、必要不可欠になる時代へと突入しています。
そこで今こそバリアフリー化の重要性を改めてお伝えします。
バリアフリースポットを調査したきっかけ
私はバリアフリースポットの調査を2005年から始めてから、14年目を迎えています。
(ちなみに調査した内容はこちらのコーナーに掲載しております。もしよろしければご覧ください)
調査をスタートをした理由は、ある出来事が発端となりました。
当時、静岡県伊東市に重度障害者リハビリテーションセンターがあり、友人が入院していたので、見舞いにいくために、茨城からの中間地点である横浜に宿泊しました。
今と違って車椅子生活に慣れていなかったせいか、さすがに長時間クルマを運転するだけの体力がなく、直接自宅の茨城から伊豆に行くことができませんでした。
2000年頃はバリアフリールームはほとんど存在しておらず、探したホテルにたまたまバリアフリールームがあることが分かり、予約を入れたのですが、しかし実際に行ってみたら、バリアフリールームといっても単なる広いだけの部屋でした。
車椅子に乗ってトイレにも風呂場にも入れない構造で、段差があって、車椅子の幅より狭い引き戸になっていたために、物理的に車椅子で利用できるような部屋ではありませんでした。
このままでは利用するのが難しかったことから、ホテルの受付にその旨を伝えて、別の部屋を変えてほしいと依頼しましたが、ホテルの担当者からは「我慢してください」という言葉だけが返ってきました。
このような回答を聞くと、皆さん驚かれると思いますが、当時は先ほど申した通り、バリアフリールームのある時代ではなかったので、そのホテルはおろか、他のホテルを紹介してもらうことも不可能でした。
仕方がないので、トイレの排尿はペットボトルを購入して対応することにして、何とか一夜を過ごしました。
ただ残念なことは、バリアフリールームでないのに「バリアフリールーム」と紹介していることでした。
もし私以外の車椅子ユーザーが宿泊しても、現地に行ってはじめて気づくようなトラブルは、極力なくしていく必要があると思い、それなれば自分が外出した際に、行ったスポットを調査をすることで、そのスポットの情報発信すれば、多くの方々に役立つのではないかと考えました。
しかもこういったトラブルを解消していくためにも、車椅子ユーザー自身の目線で情報を発信していくことが、より的確な情報になると思いました。
そして2005年頃からブログという情報発信の手段が流行りだしたこともあり、ブログを使って、仕事のない休日に、バリアフリースポットの調査を始めました。
いつのまにかその調査も気がつけば10年以上続けていて、全国47都道府県にわたり1000件以上の調査になっていました。
トイレにおけるバリアフリーの課題
最近ではネットのいろいろなサイトでバリアフリー可という表示がされています。
しかし実際に現地へ行くと、その表示とは違うことがよくあります。
例えば、多目的トイレでは、実際に行ってみると思っていたものとは違う欠陥のあるトイレが目立ちます。
よくあるのが、トイレのスペースが不足しているために、トイレ内で車椅子の転回スペースがなかったりします。
ひどい場合で言えば、車椅子自体が入れるスペースがなく、扉を閉めることのできないものもありました。
こうなると明らかに設計上のミスであり、多目的トイレがあっても使えない残念なトイレになってしまっています。
さらには多目的トイレなのに単なる広いだけで、手すりなどは一切ないケースです。
但し、障害レベルの低い方やベビーカーを利用する人なら使用できるかもしれません。
でも手すりがないのも設計上のミスと言えるでしょう。
最近多いのは、片側には手すりがついているのに、もう片側には手すりがないケースです。
できれば両方つけることで、安全度が高まります。
重要なポイントは、車椅子やベビーカーなどで利用する際に、安全なのかどうかです。
意外と何も知らない中で、多目的トイレを造ってしまうことがトラブルの原因になってしまうとも言えるでしょう。
実際に造ってしまってから、改修工事を行うのはコスト面を考えるとかなり厳しくなります。
そのため、設計段階から車椅子利用者やベビーカーの利用者のチェックなどをもとに、施工するとより適切なトイレになるはずです。
ちなみにトイレについては、私が出している無料PDF「バリアフリートイレ設置ノウハウ」がありますので、もしよろしければダウンロードできます。
ダウンロードはこちら
車椅子におけるバリアの1つが段差の課題
1㎝程度の段差であれば、前輪キャスターを持ち上げなくてもクリアできますが、1㎝以上の段差になると前輪キャスターを持ちあげる(ウイリーのような状態)ことが必要になります。
前輪のキャスターを持ち上げることについては、手が不自由な頸椎損傷者の場合であると、難しい場合が出てくるでしょう。
そのため車椅子利用者にとって、適した段差は1㎝以下となります。
このように世の中ではいろいろな面でバリアがあります。
ここでお伝えしたいのは、世の中においてバリアフリーというキーワードを経営者の皆さまにも最低限知っておいた方がいろいろな面で役に立つということです。
知らないことで、車椅子利用者に問題のない段差と思っていても、実際には利用できないことが意外にあります。
せっかく造ったのに利用できないのであれば、造った意味がありませんし、期待していた思いが反動となって、評判の悪い施設だと思われてしまうでしょう。
これからは、いかに多くのお客さまから選ばれることが、今後の事業の成功につながるでしょう。
駐車場におけるバリアの課題
身障者用駐車スペースの大きさについては、横幅2.5Mと乗り降りするための1Mを合わせた3.5Mになります。
2年前にさかのぼりますが、1ヶ月かけて車に乗って、日本1周のバリアフリースポットの調査を実施しました。
ホテルについては事前にどの地域にバリアフリールームがあるのかどうかをリストアップしましたが、身障者用駐車スペースについては行き当たりばったりの対応になりました。
もちろん訪れたスポットにすべて身障者用駐車スペースがあったわけではありません。
でも都心と違って駐車場自体に余裕があったことから、なんとかクリアすることができました。
よくあるのが身障者用駐車スペースにカラーコーンを置いているケースです。
一般の利用者がとめないようにすることはいいのかもしれませんが、肝心な障害者が使おうとした時にも使えないことになってしまいます。
その際は目的地の会社に電話をして「お手数ですがカラーコーンを動かしていただけませんでしょうか?」と頼みました。
残念ながらマナーの悪い日本だからこその措置だと思いますが、カラーコーンを置くことで不快感を示す障害者も多いと思います。
駐車場のマナー解消のために、ショッピングモールではリモコン式の身障者用駐車スペースを設置しております。
身体障害者手帳を利用している人だけが登録できて、リモコンを借りることができます。
こういった取り組みは素晴らしいですが、コストがかかりすぎる問題があります。
また障害者側からすると一般の方がとめていたら、自分がそのお店に来てもとめることができないという状況です。
そのためにカラーコーンを置いておくのは、あまり相応しい対応ではないように思います。
車椅子ユーザーにおける情報が意外と伝わっていない現実
まわりの車椅子ユーザーの友人とよく話すことが多いのですが、「えっ、そうなんですか?」「そんなことが可能なんですか?」ということをよく聞きます。
残念ながら、いかに車椅子ユーザーにとっての有益な情報が伝わっていないかということが気になります。
これは受ける側だけでなく、発信する側にも課題があると思っています。
通常は「なぜ教えてくれないの?」と思ってしまいますが、車椅子ユーザーにとって、情報というものは、自分から見つけにいかなければならないと思うようになりました。
待っていても何も分からないと思いました。
生活の情報・車椅子や周辺機器の情報・健康における情報などいろいろな情報がネットなどで発信されております。
例えば、私が使っている健康機器ですが、脊髄損傷者でも立位になってトレーニングするものがあります。
車椅子ユーザーにとっては、股関節・膀胱・下半身の筋肉など意外にケアをしないで過ごすことが多いと思います。
どうしても上半身だけを鍛えるということになってしまいがちです。でも下半身のトレーニングは生きていく上では、ものすごく重要な部分です。
立位になれないことでいくつかの病気につながる可能性があります。
そこで下半身に負荷をかけたり、身体の姿勢矯正をすることで、病気予防に効果があるとと言われております。
ネット社会なのでいろいろな方をお手本として知っていくのもいいですし、国際福祉機器展やバリアフリー展などに行って新しい機器を知ることもできます。
まずはそういったことをはじめとして情報を手に入れるということの重要性は大いにあります。
今後はips細胞の移植技術をはじめとして、治療における部分も情報発信されてくるでしょう。
最新の情報に遅れないことが重要であり、情報を発信する側、情報を受け取る側の両方が盛んに交流することができるようになると、バリアフリーの必要性がより高まっていきます。
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